この女 (文春文庫 も 20-6)
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この女 (文春文庫 も 20-6) / 感想・レビュー
さてさて
『前略。いつも年賀状を有難う。君が探していた原稿が見つかりました』という手紙の書き出しから始まるこの作品。そして、読み終わった誰もが必ずこの冒頭の手紙を読み返したくなるこの作品。『職探し以外の目的でやってくる人間は限られている』という大阪・釜ヶ崎の街。ここにやってくる人間は『ここへ来れば自分よりも不幸な人間に会えると信じている』と言われるそんな街でたくましく生きる人々のリアルな描写に思わず読み入ってしまうこの作品。そして、最後まで全く見通せない結末に、幸せとは何かをふと考えることになる、そんな作品でした。
2021/09/28
こーた
小説を書く小説が好きだ。『この女』。名もなき男が書いた小説は、大震災の混乱に長く埋もれた。阪神淡路が壊滅し、カルト教団の脅威に日本中が覆われた、あの年。みなが漠然と世紀末をかんじていた。時代が確実に変わっていくそのとき、男は釜のドヤ街で女を追いかけて、ただひたすらに書きつづけた。それは女の生涯であると同時に、書く男の物語でもあった。『この女』にして『この男』。どこからが小説で、どこまでが現実なのか。虚構と現実が妖しく混ざり合って、いつしか小説に飲みこまれていく。
2018/09/24
しんたろー
森さん3冊目。1994~95年の大阪を舞台にした人情物語。ストーリーテリングの巧さで直ぐに惹き込まれた…ドヤ街の匂いや人々の汗や息遣いを感じるのだが、下品には感じないのは底辺で生きる者やハンデを抱えた者へ安い憐憫ではない温かさが通底しているからだろう。中心人物の礼司と結子の二人は勿論の事、登場人物が人間臭いのも親近感を抱けた。結子の台詞「止まっとるよりは動いとったほうがええ。方向なんぞええ加減でも、動いとったらあとからついてくるわ」に大きく頷きつつ、東京で自転車の二人乗りする彼らを想像して余韻に浸った。
2018/04/06
ベイマックス
大阪、西成のドヤ街にクラス主人公の男が、小説をいらいされての物語。結子と出会いだけでなく個性的なキャラクターたちとの出会いと絡み、そして、生い立ち。結子の生い立ち。恋愛小説ではなくて、人生小説かな。『この女』という作品名に疑問が湧く。もう少し、内容に接した、魅力的な作品名はなかったか。
2021/07/12
takaC
自分は結構好きだなこの小説。巧いと思う。
2015/06/19
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