地層捜査 (文春文庫 さ 43-6)
地層捜査 (文春文庫 さ 43-6) / 感想・レビュー
こーた
1995年、四谷荒木町でアパートオーナーの老女が殺害される。西の大地が激しく震え、首都を毒ガスが襲った年だ。その十五年後、前代未聞のテロ事件は、ひとつの副産物を生む。時効撤廃。未解決におわった老女殺人事件は、再び捜査の対象となる。かつての花街、被害者は芸者置屋の元女将、バブル崩壊と再開発、地上げをめぐるトラブル、ちらつく暴力団の影。捜査一課をはじき出された若き刑事は、谷間の街を上り下りしながら、時代の地層を紐解いていく。定年退職した元刑事の相談員とともに。コールドケースと警察小説、その見事なまでの融合。
2018/03/23
ふじさん
謹慎中の若き刑事・水戸部裕は迷宮入り事件を担当する「特命捜査対策室」に配属されることになる。そこで担当することになったのは、15年前の四谷荒川町の老婆殺害事件だった。専従捜査員は水戸部一人で、退職刑事の加納が相談員として手伝うことになる。土地トラブルでやくざが関わっていると思われたが、花街の過去を探るうちに、思いもよらない花街ならではの男女の色恋と金が絡んだ真実が見えてくる。定年退職した初老の男の優しさとあくまでも筋を通そうする若き刑事の確執が。古き東京の下町を舞台に静かな余韻を残す警察小説。
2022/02/03
reo
2010年殺人事件の時効が廃止になり、水戸部は15年前荒木町で起きた殺人事件の再捜査を命じられる。相棒加納は、以前その事件を担当した元刑事である。作者は加納に、昭和30年代の荒木町の花街や、東京五輪で賑わった当時の様子を訥々と語らせる。四谷荒木町の風景がセピア色に切り取られた写真のように情緒たっぷりと漂ってきます。水戸部は僅かな状況証拠だけを頼りに、散らばっていたピースが嵌まり繋がっていったとき、表層の事件の捜査から、四谷荒木町の底の地層のように積み重なった深い事件の真相がみえてくる。よろしいなぁこれも。
2016/12/19
キムチ
道警シリーズではなく「代官山・・」のテイスト。時効制度の法改正で再浮上した事件捜査の展開。持ち込んだ男の動機がイマイチ弱く こんな意図で再捜査するかなと?リアル感なし。謹慎明け水戸部のみ専従で 組む加納は捜査員。なかなか臭く、清張モノにいたような男。15年前の元芸妓刺殺事件に絡む地上げ屋等・・時代はバブルが弾け、四ッ谷荒木町が「その空気」で失踪も何もあっておかしくなかったろう時。聞き込み関係者もその筋ありぃ、土建屋等多彩。「その」時代を嗅ぐ世相社会作としては面白く読めた。。が、やはり道警ものがいい。
2021/12/07
達ちゃん
地味だけど、じんわりとした面白さがあるじっくりと読める警察小説でした。2人のコンビが両方ともいい味出してました。続編もあるようなので、ぜひ読みたいです。
2017/12/08
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