時の罠 (文春文庫 み 44-30)
時の罠 (文春文庫 み 44-30) / 感想・レビュー
へくとぱすかる
4編中タイムカプセル・テーマが2編。辻村作品は日常の中にありがちな時の流れを、主人公の行動と心の動きで書き運びながら、成長物語として成り立たせている。湊作品は、ひょっとしたらありうる? と思える設定を発端に、ちょっとした誤解を軸にした、子どもの悲喜こもごもの「運命」を描いている。いずれも、シリアスな時間の物語とは、こうするのだ、という見本のように思って感心した。万城目作品・米澤作品は、かなりユーモラスに「時間」を扱って、SF的、ファンタジー的世界を描いて、ニヤリと楽しみながら読了。好アンソロジーです。
2014/08/13
kishikan
時間とは不思議なもので、今という時もアッという間に過去に過ぎ去ったり、やたら時の経つのが遅く感じたりする。また、正確な時を刻む時計があるかと思えばそれが絶対的な尺度ではない、そう思える時もある。時の罠に収められたこの4つの小説は、時間をメインテーマにしつつ、時間をワープして過去と現在をつなぐタイムカプセルの話や、時間を相対化し長い年月を短縮させ、自然に知性を与える一方で人間の存在を無にする話、時を操り時の空間を行き来する神様の話。SF小説みたいにならず、どこかほのぼのとしているので、とても好感が持てます。
2015/01/15
takaC
個々の話がというよりこの一冊の本が気に入った。配列も計画尽くってことですか?
2014/10/25
匠
4人の人気作家による4つの短編集。万城目さんも米澤さんも初読で、ドラマ版の『鹿男あをによし』やアニメ版の『氷菓』を知っている程度だが、本書の短編でも日本古来からの「時の罠」に迷い込んだ感じで興味深く読んだ。一番心を揺さぶられたのは辻村さんの「タイムカプセルの八年」で、大学の准教授だった頃の堅物な父親が息子の知らないところで成長とも言うべき変化を見せたことに感涙。また、湊さんの「長井優介へ」は3秒と15年という「時」への絡め方にまず唸った。そしてかつての僕にも御守があったことを思い出した。良い作品だった。
2014/12/19
hiro
‘罠’かどうか分からないが、‘時’にまつわる人気作家4人のアンソロジー。偶然なのか、辻村さんと湊さんの女性二人は、ともにどんでん返しのあるタイムカプセル物で、二人を作品を読み比べができ、その意味でも面白かった。一番期待していた万城目さんの作品は、落語のような語り口の神様がでてくるファンタジー物。やはり万城目さんの作品は、じっくり読める長編がいい。そして米澤さんの作品は、実験的な小説?・・。粒ぞろい作家のアンソロジーということで大変期待したが、このクラスの作家でも、すべての作品が面白いとは言えないものだ。
2014/07/15
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