朝の霧 (文春文庫 や 29-23)
朝の霧 (文春文庫 や 29-23) / 感想・レビュー
藤枝梅安
長宗我部元親の時代の波川玄蕃城主・波川清宗とその妻・養甫の物語。長宗我部側の史書とは違う視点で、戦国武将のあり方を描いている。元親の妹でありながら一目惚れで玄蕃に嫁ぎ、元親の要請を拒んで、玄蕃の側につく、気丈な養甫。それを逆恨みして、無理難題を吹っかけてくる元親。話の展開が複雑で捉えにくい場面があり、逆に展開が速過ぎる部分もある。地方の武将を描かせれば岩井三四二さんの方が上手だと感じる。久しぶりに一力さんの小説を読んだが、やはりこの作家は商人・町人を描く方が得意なようだ。
2014/12/07
S.Mori
長宗我部元親に仕えた武将波川玄藩の生涯を描いた小説です。玄藩は元親から信頼されて、彼の妹と結婚します。しかし、器量人であった玄藩に元親は次第に嫉妬を覚えるようになり、無理難題を吹っ掛けて悲劇が起こります。読んでいて胸が熱くなる素晴らしい時代小説でした。元親の非道に対して玄藩は己の誠を尽くすことで対峙します。彼の揺るぎのない武士としての生き方は部下や領民にも伝わり、玄藩が追い込まれても彼を慕い続けるのです。玄藩のような清廉な生き方は現代の日本では消えたように見えますが、どこかに残っていると信じたいです。
2020/04/05
温故知新
長宗我部元親の家臣でもあり妹婿でもある波川玄蕃の物語。出来過ぎる家臣は頼りになるが徐々に嫉妬と猜疑の対象に。こんな武将がいたとは。着目点が良い。家族と家臣を守る為、必死に勤めれば務めるほど…。一気読み間違いなし!
2014/11/26
marsa
戦国時代は非情だ。器の小さいトップは人望厚い臣下を恐れ、無理難題今、大河ドラマも秀吉が黒田官兵衛に対して、同じような疑心暗鬼におそわれているけど、長宗我部元親に対する波川玄蕃は、まっすぐすぎたのだと思う。官兵衛ほど、老獪なら玄蕃も一族も道はあったのではないかと思うが、ある意味滅びの美学を感じた。山本一力さんの作品は今まで江戸の町人の人情モノをよんできたのでとても新鮮だった。今まで知らなかった武将に出会えた事も。
2014/11/01
steamboat
長宗我部元親の家臣、波川玄蕃とその妻・養甫の話。この時代、謀反でも起こされたら文字通り命がないから、出来すぎる部下は脅威だったんだろう。元親の気持ちも分からなくはない。また、常にお互いを思い合う二人の夫婦愛が素敵だった。
2016/06/07
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