虚像の道化師 (文春文庫 ひ 13-11)
虚像の道化師 (文春文庫 ひ 13-11) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
ガリレオ・シリーズの第7弾。今回は原点に還って、漢語動詞をタイトルに冠した短篇が4篇。手法も、基本的にはこれまで通りに湯川が物理学を駆使して謎を解いて見せるというもの。初期の頃に比べると、より洗練度を増しているようだ。前半の2篇こそは物理法則によるトリックの解明が中心だったが、後半ではさらに余裕と展開相が見られる。「偽装う」は殊にいい出来だ。湯川がこれまではあまり見せることのなかった感性的な側面を見せるのである。でも、こんな調子だと湯川は同窓生たちに焼き肉を奢ることになってしまいそうだ。
2022/01/12
Tetchy
本書では内海刑事の登場以来、疎遠になりつつあった草薙刑事と湯川との名コンビぶりが復活しており個人的には嬉しかった。今回も科学知識を活用したトリックが並べられているが生活家電に取り入れられている物、かつて学生時代に学んだ物、また初めて聞く物もありとヴァラエティに富んでいる。そしてさらに湯川は人に対する接し方が温かくなってきており、特に「透視す」、「曲球る」、「演技る」の3編ではそれが顕著だ。以前は加賀シリーズの方に好みが偏っていたが、本書でこのシリーズに好みの天秤の傾きがさらに強くなったと告白しておこう。
2017/01/18
射手座の天使あきちゃん
探偵ガリレオシリーズ第7作 神憑りもイリュージョンも奇跡や超能力さえも、我らがガリレオ先生にかかれば物理法則で解けない謎は無い! 今回も冴えわたる頭脳と隙のない論理展開と言いたいけど、なんか人情派を目指してませんか 湯川先生?(笑) サクサク・クランチチョコの歯触りですね! おぉ、そっかバレンタインですねぇ まぁ縁が無いですけどね(笑)
2016/02/10
ナルピーチ
シリーズ7作目は短編7作品が収録。どの話もコンパクトに纏めて、しっかり起承転結を経て締め括ってくれる。本作ではその表題『虚像の道化師』にちなんで、全体的に人の心情をキーポイントに置いて、定番の物理トリックを織り混ぜたイメージ。とある新興宗教の教祖とその周りの取巻き達。戦力外通告を受けた野球選手とその妻。双子の姉妹によるテレパシーなど、実体のない虚像を追い求める人々は、ガリレオとどう対峙するのか。本作も安定の面白さだった。
2021/10/15
kishikan
これは超お買い得・お読み読!というのもこの文庫版「虚像の道化師」は、単行本「虚像の道化師」と「禁断の魔術」の単行本2冊をまとめた短編7作品からなる合作本だからなんです。正確には禁断の魔術は4編の短編小説なのですが、「猛射つ」は収められていません。というのも「猛射つ」は知ってる方も多いでしょうが、長編化されて文庫版「禁断の魔術」になったからです。それはともかく、東野作品をオリジナル全制覇を企てなければ、やはりこの文庫版はお得。TVのガリレオ2が印象深いか小説の方が味わい深いか、比べるのも面白いですよ。
2015/10/01
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