武曲 (文春文庫 ふ 19-3)
武曲 (文春文庫 ふ 19-3) / 感想・レビュー
chiru
“殺人剣の使い手”と呼ばれた研吾と、天性の攻撃性を内に秘めた羽田の、剣を介して魂をぶつけあう物語。剣の道を極めても日本人は人を斬らないし、必要となる機会もない。“人を殺してはいけない”のに、なぜ殺意を飼い馴らす者が勝つのか。その答えを先にみつけるのはどちらか。『自己なければ敵なし』が強く刺さってくる。不確かな自分がいるから、敵が眼前に立つ…。自分の道を究める真のファイターには、互角のライバルが必要なのかな。二人ともストイックじゃないのに、手に入らないものを追い求めるような闘いに心を打たれました! ★4
2019/08/27
hit4papa
ラッパーを目指す高校生が、剣道部との諍いを契機に剣道の才を開花させる青春小説。父親を植物状態にしてしまったアルコール依存症のコーチ、二人の視点で物語は展開します。二人を導くのは寺の住職という、沢庵和尚を想起させるありがちな設定ではあるものの、主役たちの心の内がじっくりと描かれており、凡百の剣道ものとはひりつき感が違います。守破離、両刃交鋒、滴水滴凍、啐啄同時…ポップなイマドキ男子が、剣の道にのめり込み、人間として成長していく過程が描かれる本作品。スリリングなシーン盛りだくさんで、アツイ思いが込み上げます。
2022/06/15
風眠
武曲(むこく)とは、星の名前らしい。北斗七星に含まれる二連星と呼ばれる星で、互いの引力が影響しあって、ぶつかりもせず、離れもせずに、存在しているふたつの星の名前。父親の呪縛から逃れられず、アルコール依存症になった剣士・矢田部が「武」なら、リリック集めに夢中なラップ少年・融は「曲」。ぶつかりもせず、離れもしない二連星のようなふたり。ただ勝てばいい、そういう次元ではなく、殺す気で相手に向かっていく気概で相手と対峙するふたり。道と名のつくものには、技だけではない深淵と美しさがある。剣道ハードボイルド、堪能した。
2018/06/26
ぷう蔵
剣道はスポーツでは無い。私も学生時代は剣道部であった。西陽の射し込む道場で毎日のように竹刀を振っていた。剣術を高めるのはもちろんであるが、私は剣術よりも剣道を突き詰めたいと志していた。しかし、試合などがあるとどうしても進むべき道より目先の術に重きが傾いてしまい最終的に何も得られなかった。学生時代にこの本を読んでいたなら、少しは強くなれたかなぁ…、などと浅はかにも思ってしまったが剣道とはそれほど単純では無い。いや、単純過ぎるのだ…、単純だからこそ、相手や周りではなく、自分と向き合えなければ成長はないのだ。
2017/06/22
ちょこまーぶる
読後のつぶやきは「難しかったなぁ~」とという感じでした。決して内容が難しかったわけではなく、自分自身に余りにも剣道の知識が無さ過ぎて、専門用語や剣道の道のような気構えや精神といったものが分からなかったので、読み進めてもピンとくるものが無かったんですよね。でも、剣道が好きな人が読んだら、夢中になって読み進めることになるんだろうな~と思いますね。ヒップホップに夢中な高校生が、才能を見いだされ、クセのある剣道部のコーチと出会い、剣道の精神や戦う姿勢に迷いながら、剣道を極めていく姿に青春を感じた感じがしました。
2019/09/01
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