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abさんご・感受体のおどり (文春文庫 く 38-1)

abさんご・感受体のおどり (文春文庫 く 38-1)

abさんご・感受体のおどり (文春文庫 く 38-1)

作家
黒田夏子
出版社
文藝春秋
発売日
2015-07-10
ISBN
9784167903992
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abさんご・感受体のおどり (文春文庫 く 38-1) / 感想・レビュー

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優希

読んでいて鳥肌が立ちました。カタカナの一切ない文章、ギリギリにまで解体された日本語。多用される平仮名で作られるのは独特の日本語の世界でした。口伝を思わせるリズム感に色気すら感じます。今まで読んできた文章とは一線を画す文章で、感覚に訴えて来るものがありました。読む人を拒むようでありながら、その世界に入れる人をのみ受け止める文学のように思います。成熟した美しい文章に体を委ねる感覚が心地よい作品でした。日本語本来の純粋な結晶が散りばめられています。

2015/09/23

佐島楓

表題作は既読。「感受体のおどり」を拝読。作品世界への没入を拒むようなところが文体にあって、とても読むのに苦労した。ただ、独特の日本語感覚には色気というか民話のような口伝のようなリズムがあって、これは黒田さんでないと書けないセンスだろう。文章に対して真摯な態度が感じられた。

2015/09/07

田氏

とうぜん、まず文体が目につく。横書きで、過剰なほどのかな書きという見た目。それがいったい何を書き出しているかに目を向けると、事物を表す語がことごとく意味要素にまで解体され、さらに漢字からひらがな(音)にまで分解されている。固有名詞も廃され、人物名ですらもどこかこの世界のものではない。時間すらもが、より小さな単位へ切り分けられる。まるで、大きな風景を拡大鏡で見せられている感じ。一ページごとに、ことばにこんなことができるのかという驚きと、思索が頭になだれ込む。その感動はもはや絶望にも近く、乾いた笑いが漏れた。

2021/08/05

禿童子

『abさんご』のみ読了。極度に絞り込まれた登場人物と、伏字を思わせるような言葉の置き換えが日本ではない外国文学の翻訳を連想させる。しかし、ひらがなを多用して読点が少ないので意外に読みやすい。「父」、「母」、「提灯」、「蚊帳」などの語彙が排除されているのはなぜか?語彙を獲得する前の幼子の視点だからか?成人後の仕事や学校生活の描写が省略されているのはなぜか?性的な感情や描写が完全に欠落しているのに、父と娘の濃密な交感と父親の内縁の妻に対する反感が浮き彫りになる。多様な解釈が可能な大胆な表現の試みに感嘆する。

2016/06/02

ふたし

とにかく、日本語の使い方が独特。個別の単語の意味は分かるが、文全体の意味がわからなかったりする。なんだか古文を読んでいる気になった。細かく分かれている断章も時系列がぐちゃぐちゃ。だけど、読んでいるうちにクセになってくる。読み通すのに1ヶ月かかった不思議な読書体験だった。

2022/12/10

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