等伯 下 (文春文庫 あ 32-5)
等伯 下 (文春文庫 あ 32-5) / 感想・レビュー
ケイ
『国宝展』のチラシで「等伯・久蔵 夢の親子共演」なんて言葉を見ると、鼻の奥がツンとする。朝倉・浅井家と信長が対立する時代から徳川が天下をとった時代に絵師として生きた等伯。等伯自身は畠山家の家来すじだから、無傷ではいられない。名を馳せれば馳せるほど、誰の絵を描いたか、誰のために描いたかで命にも関わることになる。時の権力者が次々と移ってゆくのだから。しかし、権力を誇示したい者が代わってゆくからこそ、彼らのための芸術家もまた強く所望された。波乱の世に大芸術家も生まれるのだろうな。欧州でもしかり。
2017/10/28
鉄之助
圧倒的勢力を誇っていた狩野派に対し、果敢な勝負を挑んだ長谷川等伯。国宝「松林図屏風」が、一人息子を失うなど失意のどん底で描かれたことに感動。余白が生かされた本物を東京国立博物館で見て、等伯の息遣いを実感した。
2018/12/10
佐々陽太朗(K.Tsubota)
下巻では等伯が真の美を探し求める姿勢、美を至上のものとする姿勢が、利休が秀吉から死を賜ったエピソードも交えて描かれた。等伯が最終的に至った境地、もしそれが利休と同じく秀吉に対して生死を賭して訴えたものだったとすれば、その答たる「松林図」は象徴的だ。積年の想いと修練の積み重ねが「楓図」であったとすれば、「松林図」はそれらを削ぎ落とし、名利から解き放たれた己の姿なのではないか。それは等伯が大いなる悲しみの人生を歩んだ末に、他を”恕する”境地に至ったことの表れではないだろうか。
2016/10/29
はたっぴ
やはり下巻も一気読み。等伯と永徳、利休に秀吉、三成。時代の重鎮が揃い、著者が各々の人物をどう描くのだろう?と期待を込めて読み進めた。これまで読書を通して様々な画家の作品に触れたが、等伯が描く肖像画は素人目にも素晴らしく、作品に込められた思いが直球で伝わってくる。仏画や屏風絵いずれもが、細部まで丁寧に描きこまれ、歴史的価値が高いのも頷ける。武士の性根を宿したまま、数々の試練に向き合い、絵師として成長の糧にしようと懸命に努力する姿には素直に心を打たれた。歴史物としても偉人伝としても読み応えのある良作だった。
2017/04/09
pukupuku
読み切った~!しかしなんとまぁ,知らなかったことの多いことよ。狩野派との対立,ときの政治勢力に翻弄される文化人や寺院,絵師たちの運命。当時の歴史的背景に深く切り込んでいるのに,ちゃんと理解できないまま先に進もうとするものだから,読み進めるのに時間がかかったけど,等伯という偉大な絵師の凄さを改めて感じずにはいられなかった。国宝展見に行きたいなぁ・・・
2017/11/12
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