王になろうとした男 (文春文庫 い 100-1)
王になろうとした男 (文春文庫 い 100-1) / 感想・レビュー
yoshida
織田信長の家臣五人の視点から描く短編集。白眉は標題作の「王になろうとした男」。モザンビークに住むヤシルバはポルトガルの奴隷商人に囚われる。イエズス会宣教師達の手により、ヤシルバは信長に献上される。ヤシルバの膂力と研ぎ澄まされた感性を信長は見抜き、彌介と名を与え自身の小姓とする。偏見を持たず、能力を見抜き接する信長に彌介は心酔する。二人は信忠の代まで掛けて欧州を制し、彌介をアフリカ大陸の王とする夢を語る。勃発する本能寺の変で夢は潰えたかにみえたが、彌介は信長の言葉を思い出し再び生きる。実に読ませる傑作です。
2017/01/15
Rin
王となろうとした織田信長。彼と関わった人たちの物語。だけど、誰の物語を読んでいても織田信長の存在感は絶大。彼の影響力の強さが、カリスマ性が伝わってくる。この時代の人たちが抱く野心、彼に仕えることで抱いた野心。その野心と信長に翻弄された人たち。その行く末も様々で、いい悪いを決めるものでもなく、誰もが精一杯に生き抜いていた。フィクションであることを忘れて一人ひとりの物語とその時代に浸ることができた。個人的には表題作と「果報者の槍」が良かった。何より知らなかった人たちを知ることができた読書の時間でした。
2018/01/13
hit4papa
織田信長のマイナーな家臣たちを主役に据えた短編集です。主役は、毛利新助、塙直政、荒木村重、津田信澄、モザンビークからの黒人奴隷彌介。信長は、彼らの運命を直接的、間接的に翻弄する役どころです。桶狭間から本能寺まで、歴史ツウ度が試されますね。荒木村重は他の小説や新書の歴史もので取り上げられていますが、他の四人の武将は見覚えがありません。信長の人物像を形作る上で、本作品集のエピソードは新鮮でした。特に、信長と彌介の出会いから本能寺の変、そしてその後の顛末と続くタイトル作は、知的好奇心を刺激されました。
2021/02/10
あも
毛利新助、塙直政、荒木村重、津田信澄、黒人奴隷の彌助…さてあなたは何人知っていましたか?信長に仕え、歴史の主役にはなれなかった彼ら。一武士として生涯を終えた者、出頭競争に敗れた者、謀反した者…信長を主役に据えるではなく、まして秀吉や明智光秀の視点から描くでもない。不器用だったり、狡っ辛かったり、情けなかったりする等身大の男達。織田信長という異形の存在に対する「畏怖」と「憧憬」の狭間で藻掻く彼らの生き様を通してこそ、その苛烈さ、底知れなさ、そして眩いまでの魅力を存分に描くことが出来たのだろう。出色の短編集。
2016/09/21
優希
面白かったです。信長の家臣故に運命に翻弄されるのがハラハラさせられました。
2021/03/13
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