むかし・あけぼの 上 小説枕草子 (文春文庫 た 3-52)
むかし・あけぼの 上 小説枕草子 (文春文庫 た 3-52) / 感想・レビュー
のびすけ
清少納言が書き綴る「春はあけぼの草子」。中宮定子さまとの共感と触れ合い。清少納言とその周りの女房や公達が個性的で生き生きと描かれていてとても楽しい。特に清少納言の夫の則光がいい味を出している。仲良しの弁のおもとが清少納言に残した言葉「書きとどめてね、定子さまのすばらしさ、女が感じたこの世のすばらしさを」にぐっときた。道隆公亡き後の権勢は伊周ではなく道長に移り、定子さまの後宮に翳りが見え始めたところで、下巻へ。
2024/05/12
assam2005
清少納言の生涯と「枕草子」が出来上がるまでの舞台裏を描く。上巻は道長が伊周を押し退け関白となったところまで。とうとう少納言の主人・中宮定子側と対立する者が頂点に立つ。その不安な中でさえ清く美しく振舞う中宮。その中宮に惚れ込む少納言。中宮定子は人間として本当に素晴らしい人だったのかもしれない。官位の低い男性達の手のひら返した立ち振る舞いを見て「これだから男は」と言う少納言の一刀両断は、生きる時代を間違えたんじゃないかと思います。この時代に今風な考え方ができ、立ち振る舞えるということに驚きました。
2020/10/31
getsuki
上巻だけでこのボリューム。そして枕草子のエピソードを織り込みつつ、清少納言の人生を鮮やかに描いていて面白い。則光のイケてなさぶりがやけにリアルでつい笑ってしまった。これに乗じて新訳の枕草子出したら売れると思うのは私だけ……?
2016/04/18
ともこ
清少納言の生涯と「枕草子」の誕生を描いた小説は、読みやすくまるでテレビドラマを見るように情景が浮かんだ。宮仕えする女性は、今で言うキャリア・ウーマンで、女は家を守るのが本来の姿とされた時代、「はねっかえり」とも見なされた。歯に衣着せぬ清少納言のもの言いは納得することが多く、定子中宮のもと、華やかで生き生きとしたサロンの仲間に加わって語り合いたいようだった。美しく聡明な定子中宮の描写には清少納言の深い愛情が感じられた。また、さまざまな女房たちの姿が現代の女性につながるようにも思え楽しかった。
2021/10/18
りー
上巻は、道隆の死→道長に内覧宣旨→定子が宮中に戻るまで。清少納言の一人称で語られ、読者は枕草子の文章と歴史上の出来事を、彼女の視点に同調して自分の気持ちのように味わえます。ライトノベル並に平易で弾むように書かれつつ、人々の心の襞に分け入る深みのある文章が素晴らしい。昔読んだ田辺さんのエッセイに、空襲警報を聞きながら不思議と生死の事ではなく、ただ、美しいものを再び見ることは出来ないのだと思った、と書かれていたのを思い出しました。清少納言の想いと重なるような気がします。刹那の美しさ、その切なさ。人の愛しさ。
2019/02/02
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