むかし・あけぼの 下 小説枕草子 (文春文庫 た 3-53)
むかし・あけぼの 下 小説枕草子 (文春文庫 た 3-53) / 感想・レビュー
のびすけ
相思相愛の主上と中宮定子さまのなんと仲睦まじいこと。そして、定子さまの後宮のなんと賑やかで楽しそうなこと。それもこれも定子さまのお人柄ゆえなのですね。そんな定子さまと清少納言は心を通わせ、定子さまを想い書き綴った「春はあけぼの草子」。とても素敵で胸を打つ物語でした。清少納言や定子さまの人間性をユーモアも交えて細やかに丁寧に描いた田辺聖子さん、お見事でした。ただ上下巻あわせて1000頁、読了に10日。ちと長かった。
2024/05/18
assam2005
後半は一気に道長の威光に負け、押しやられていく。少納言から見る中宮・定子像はどこまでも貴く清らかで美しいのだが、後半になり儚げな感じが加わる。自分の最期を予言していたかのように。そして男と肩を並べて生きる少納言は、現代における「おひとりさま」の先駆者だったのではないか。女が、男に振り回されることなく一人で生き抜けるのだと示した少納言。男女差別に関してはかなり先鋭的ではあるが、身分差別に関しては当時の一般的な意見。弱者の立場に立って、初めて見える人だったのだろう。弱者である女だから見えた世界。
2020/11/03
getsuki
下巻まで読了。清少納言と定子さまの細やかなやり取りは楽しくも、奥深い。それを引き立たせる男性陣の配置も上手いなぁと思うなど。深い知識と教養に裏付けられた文章に時々混じる現代語が、雰囲気を損ねていない事に驚いた。
2016/04/18
りー
山本淳子さんの『枕草子のたくらみ』では“こんな人を同僚に働きたい”と思ったのですが、田辺さんの書く彼女は、なんというか、愛すべき人でした。上巻の「私は生きることが好きだ」というモノローグの通り、定子を魂の底から愛し抜き、男君たちと恋をして、ケラケラ明るい笑顔で「楽しかった」と去って行ったに違いない。一人目の夫=橘則光、二人目の夫=藤原棟世、男友達=経房、斉信、行成・・・それぞれに男性として個性的で素敵。彼らの魅力を引き出した大人の女性としての豊かさ。女としての魅力も強く感じた田辺さんの清少納言でした。
2019/02/07
ともこ
道長一族は権力の座から遠ざかり、やがて定子中宮も命果ててしまう。上巻ではウキウキ暮らした清少納言だが、下巻は切ない時代が始まった。しかし、主従関係を超えて清少納言と中宮を結びつけたものは生涯変わらなかった。感性が合い、打てば響くような相手を身近に持った二人は幸せな人生と思う。また、いがみ合う夫則光は、下卑た中にも人として憎めない親しみと勢いがあり、清少納言とは良いコンビだったと思う。60代になった最後まで「はねっかえり」精神旺盛な清少納言が魅力的に描かれた小説だった。
2021/10/18
感想・レビューをもっと見る