永い言い訳 (文春文庫 に 20-2)
永い言い訳 (文春文庫 に 20-2) / 感想・レビュー
yoshida
作家の幸夫は、妻の夏子を突然の事故で亡くす。二人の愛情は冷え、子供のない生き方を選択した事もあり幸夫は悲しみに実感がなく不倫を続ける。同じ事故で妻の友人のゆきも亡くなった。ゆきの夫の陽一と子供達に会う幸夫。窮地にある陽一達を助けるため、幸夫は子供達の世話をすることになる。子供達との交流により、少しずつ変わってゆく幸夫。しかし、ある事件により彼等は離れる事になる。なかなか屈折した幸夫の性格もあり、入り込めず。自分の周りにいてくれる人達と向き合う大切さを感じた。個人的な経験で感想を書くのが難しかった。要再読。
2017/06/04
さてさて
2016年本屋大賞で第4位にランクインしたこの作品。 『それが、衣笠幸夫と衣笠夏子の、別れの挨拶となった』と、全く予期せぬ展開の中に、妻との突然の別れを経験することになった二人の男性のそれからが描かれていくこの作品。そこには、同じく妻を亡くしたといってもそれまでの前提が全く異なる二人の物語が描かれていました。まるで映像が見えるかのような表現に魅せられるこの作品。視点の切り替えに少し戸惑うこの作品。西川さんが『長い』ではなく、「永い言い訳」と名付けられた書名に、人の届かぬ思いを強く感じる、そんな作品でした。
2024/02/25
れみ
バス事故で妻の夏子を亡くした作家の津村啓こと幸夫と同じく妻のゆきを亡くしたトラック運転手の陽一とその子どもである真平と灯。彼らとその周りの人々の視点で綴られる物語。家族を突然亡くし以前とは変わってしまった生活に対す喪失感や後悔や困惑やストレスをひしひしと感じ幸夫が初めて泣けたとき私も一緒に初めて泣けた。幸夫の一人語りと周りの人が語る幸夫像には大きなギャップがあるけど他者と完全に理解し合うのはなかなか難しいという当然のことをあらためて思う。色々な人物の視点と心情で多面的に見られるこういう構成は好きだなあ。
2017/01/07
せ~や
人が亡くなる。残された人はどうする?感情のままに、泣ければいい、怒れればいい。でもそれはきっとひとりぼっちじゃできない。誰かと一緒に、ふたりぼっちで、じっくり時間をかけて出来ていくだ。昔、心配してくれた友人に「あなたが気にする事じゃないから、心配しなくていい」と言って、「心配したっていいやん!」と怒られた。なぜそんな怒る?と思ったけど、今ならその意味がわかる。あの時、友人はどんな気持ちで僕の言葉を聞いたんだろ。映画では観れないそれぞれの葛藤や想いがわかった。カッコよくなくてもゆっくりと進んでいければいい。
2016/11/12
ケンイチミズバ
久しぶりに小説を読んで泣きそうになった。勉強中の真平と幸夫君の会話のシーンで自分も涙が落ちるかと。こんなに心が動かされたのはこの作品が自分の心を映す鏡みたいだったから。いや、鏡でなく、身につまされたと言った方が正しい。幸夫君と夏ちゃんの関係は今の自分たち夫婦と似ている、同じ、近いから。私は妻より先に死にたい。先に死んだ方がいい。先に死ぬべきだと思う。今わかり合えないこと、言えないことが言えるようになるかもしれないのが相手が亡くなってからというのでは絶対によくない。それはわかっている。だけど無理そうだ。
2016/09/30
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