思い孕み ご隠居さん(六) (文春文庫 の 20-6)
思い孕み ご隠居さん(六) (文春文庫 の 20-6) / 感想・レビュー
藤枝梅安
「想像妊娠」より「思い孕み」の方が言葉としてわかりやすいし、切実さを感じる。今回も梟助さんが鏡を磨ぎながら、鏡にまつわる不思議な、しかし「荒唐無稽」で片づけることができない物語を聞き、話す。まずは相手の話を聞き、乞われれば自分の知っている話を、聞き手に合わせて脚色して話す。梟助の言動を通して、信頼される人の条件を教えられる気がする。
2017/05/16
baba
梟助が話すよりむしろ聞くことが多く、落語に関する話は1話でしたがのんびりと気分になりました。思い孕みは想像妊娠とわかるが「母と子」は何か不消化気味。
2017/05/11
ひさか
2017年2月文春文庫刊。書き下ろし。シリーズ6作目。消えた一家、母と子、名札、思い孕み、鏡のふしぎ、の5つの連作短編。いつものように多彩なお話。タイトルで、なんとなく傾向はわかるもののあちらこちらとブレるところが楽しい。次巻がないのが寂しいです。
2022/04/12
onasu
ひと昔前なら、近所の床屋で髪を切ってもらいながら、べちゃくちゃしゃべってくる、とは普通のことだった。また、そういう人は相手を問わず、話したい人には聞き手に回るし、聞きたい人、会話をしたくない人には…、とさながら梟助さんだ。 でも昨今は合理主義の名のもと、買い物はスーパーで、調髪は10分千円のところ、ネットショップに至っては…。 昔はよかったなんて、しょぼくれた物言いをする気はないけど、商売をする人と接っしている間に四方山話しをする、そんなことが今はなき昔日の風景になってしまったのかな…。
2017/03/23
qoop
あえていえば「耳嚢」的な創作というのが一番しっくり来るこのシリーズ、6冊目の本巻は特に伝奇的趣きが濃い印象を受ける。聞き書きという体裁の「耳嚢」に通じる間口の広さを持ちながら破綻をきたさないのは、やはり主人公の造形が効いているのだろう。神秘的/科学的な側面を併せ持ち、身分の上下の隔てなく他家に出入りし、市井の機微にも通じている… そんな鏡研ぎ師を主人公に奇談・珍談を語らせるという趣向がどれほど巧みか、巻数を重ねるごとに強く感じる。
2017/03/03
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