男ともだち (文春文庫 ち 8-1)
男ともだち (文春文庫 ち 8-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
登場する人物たちは、主人公の神名を含めてことごとく通常の道徳観からは大きく逸脱している。妻帯者の医師、真司、同窓の(現在はMR)ハセオ、同じく同窓の友人、美穂。彼らには性のモラルは通じない。もっとも、神名はイラストレーターであり、表現者である分だけ断罪を幾分かは免れるかもしれない。私は基本的には神名に感情移入しつつ、彼女の視点から読んだが、この自堕落な不道徳は許せない、もしくはついていけないという読者もありそうだ。主題的には、29歳という年齢が抱える現在と将来への漠然とした煩悶が描かれたのだと思われる。
2024/05/23
さてさて
『愛人でも恋人でもないよ、ハセオはただの男ともだち』。悩み苦しみながらも『自分が小さかった時に見たかった景色』をようやく見つけたというその女性。そんな女性から『ハセオにとっての愛情ってなに?』と訊かれた男性はこんな風に答えます。『見ててやることかな』。女性の側から見えるそんな男性の事を「男ともだち」という言葉をもって描いていくこの作品。そして、葵という一人の女性の成長の物語が描かれるこの作品。「男ともだち」なんて関係性は絶対にあり得ない!そうおっしゃるあなたにこそ是非読んでいただきたい、そんな作品でした。
2021/12/25
MI
千早さん初読み。男ともだちは存在するのかと思いながら読んだ。神名にハセオがいてよかった。誰とでもヤレるのに、ハセオには昔からできない。露月さんに「それはあなたが究極のファザコンだからよ。男を信じてない。ハセオは神名のことを大事に思ってるから手を出してこない、それに甘えてる貴方はファザコンなのよ。」男と女の関係以上の何か深い愛を感じた。ハセオも「最高の愛は見守ること」といっている。お互いを想い、さりげなく電話や会いにきてくだらないことをいって笑わせてくれる存在。なかなかいないけど、すてきな物語でした。
2023/11/18
ナマアタタカイカタタタキキ
あー…いいね、たまらんね、ハセオ。だらしない奴らばかりな話と言われればそれまでだけれど、夢中になって読み終えた。こんな間柄になったら、たとえ友達でもどこかで独占欲が芽生えてしまいそうだけれど、自分のものにだけでなく、誰のものにもならなさそうな男だからこそ、だろうか。本来の人間同士の関係って、何かのために結託したり、既にある雛型通りに築くのでは決してなくて、あくまで一対一で向き合ってそれぞれの形を育むもので、互いの気持ちの均衡の上に初めて成り立つ、危ういけれどかけがえのないものであるはずなんだよね。尊いわ。
2020/10/07
相田うえお
★★★☆☆19099 初読み作家さん!読み物としては楽しめましたけど、久しぶりにどの登場人物にもまったく共感出来ませんでした。異性の友達...子供や学生,御高齢の方なら分かりますが、普通は友達だと言っても世間一般にはなかなか理解を得られるものではないでしょう。まあ、下心の無い異性の友達がいるというのは素敵な事だとは思いますよ、確かに。。(周りからは単なるカップルに見えるだけかもしれませんけどね。) そうだ!当方、異性の友達いました!二匹も。。メス猫ですが何か問題でも? っていうか、ニャンは家族だった。
2019/11/01
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