ゴーストマン 時限紙幣 (文春文庫 ホ 10-1)
ゴーストマン 時限紙幣 (文春文庫 ホ 10-1) / 感想・レビュー
chiseiok
うぅ~んむむ…^^;。悪くはないけれど、ちょっと期待過剰だったかなー。新刊時の評判がよかったので、この先きっと…と思いつつ結局最後まで読み切れたけれど、事前情報なしだったら、多分リタイアしたかも。牽引力の弱い若干眠たい展開、荒事シーンがあっても危機感が薄いんですね。ツイストペアケーブルのように過去と現在が交互に語られてゆく構成で、クライマックスでそれぞれのストーリーが鮮やかにしゃきーんと収束するのかなと思いきや、あれ?あそーなのって。作者の早逝は残念。この先があれば化けたかもしれないのですが…。
2017/04/04
本木英朗
「ゴーストマン」とは裏世界での職掌のひとつで、最大の任務は「姿を消すこと」である。語り手の「私」はメーキャップや演技によって、それぞれまったく別個の人格に変貌を遂げるプロだった。そんな彼の過去を知る数少ない人物からの依頼で、「私」は48時間以内にカジノから強奪された120万ドルの紙幣を回収することになる。期限が来るとその紙幣は爆発するのだ……。不思議な読後感。「私」の人物造形に魅力を感じないままの読書だったので、常に距離を置いての物語体験となった。結果として骨太なストーリーは客観的に楽しむことはできたが。
2017/04/06
ち~
一匹狼の銀行強盗の『私』は、何通りもの人間に変身し、自由に姿を消す『ゴーストマン』。5年前のしくじりで借りを作ったマフィアから、強盗に失敗し、120万ドルと共に姿を消した部下の捜索を強要される。期限は48時間。敵対するマフィアからも目をつけられ絶体絶命に陥っても、双方に決して主導権を渡さない『私』。5年前の失敗により、ゴーストマンとしての技をストイックに磨き上げた『私』が時折り見せる人間味が良かった。5年前のエピソードと交互に書かれているので、どのようにゴーストマンが完成されたかが分かる。
2021/01/24
Small World
「ゴーストマン」というタイトルの響きの軽さに、若干の不安を持ちながら読みはじめましたが、なかなか面白かったです。これはディテールを楽しむタイプの作品で、映画的に場面転換がスピーディーに進むので、どんどん読めました。現在の時間軸と平行して過去の事件が語られますが、次回作ではその続きが読めそうで楽しみです。
2018/05/27
ネムル
素晴らしい。この魅力は細部の集積と無駄を削ぎ落とした形式こそが一番美しい、というモダニズムの建築様式のようだ。不必要な自分語りをせず、殺人シーンも解剖台での観察のように適格に語り、そして不必要な殺人はせず黙々と仕事をこなす。クライムノベルの理想のようで、とにかくカッコいい。この様式美はフリッツ・ラングを、あるいは多少のご都合主義なんかも勢いでぐいぐい押し進める様はマイケル・マンを思わせもする。また、主人公に人間味をもたらすような破綻はギリギリにまで切り詰められた隠し味として。その完成度の凄みに驚いた。
2017/07/03
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