宇喜多の捨て嫁 (文春文庫 き 44-1)
宇喜多の捨て嫁 (文春文庫 き 44-1) / 感想・レビュー
starbro
6月の第一作は、『宇喜多の捨て嫁』です。以前から読みたかったんですが、未読の状態でした。今回文庫化されたので、読みました。木下昌輝、二作目です。全編に腐臭と錆びた血の匂いが漂う血塗られた連作短編集、独特の世界観で、デビュー作で直木賞ノミネート、高校生直木賞受賞も納得です。高校生直木賞実行委員会のメンバーは大人びているんでしょうネ。普通の高校生だったら『サラバ!』を選んでいる(実際は7対5と僅差)ような気がします。宇喜多直家は戦国時代のゾンビだったのかも知れません。
2017/06/02
しんごろ
中国地方の三大謀将と言われ、悪人のイメージもある宇喜多直家の物語。読み進めていくうちに宇喜多直家のイメージが変わる。乱世の中で、ものすごい人間ドラマを見たような気がする。宇喜多三老を筆頭に家臣達が、このような男に最後までついていったのかわかる気がする。その一方で嫁、娘達がなんともかわいそうで…。波瀾万丈に加えて、切なさも、感じる物語でもあった。ただ個人的には、時系列がしっかりと追ってくれてていれば、もっと面白く読めたかなと思ってます。
2020/03/10
岡本
乱世の梟雄・宇喜多直家の印象をガラッと変える一冊に出会えた。多くの作品では無慈悲で冷酷な野心家と書かれる事の多い直家を複数の視点から描いている。読み進めると其々の思惑があり、直家の所業も異なった意味を持ってくる。著者の他の作品も読んでみたくなった。
2018/09/14
ナルピーチ
“宇喜多直家”の生涯を様々な人物の視点から描いた連作短編集。この小説を読む以前と読み終わったあとでは直家に対する印象が大きく違う。戦国時代の“梟雄”として知られる直家。その異名通り、本書の中でも生々しく残虐極まりない描写が多く描かれている。でもそれは戦国時代を生き抜く為の術。そうやって決して大きくはない氏族から備前一国の支配者にまで上り詰めていく。本書では今まで直家に抱いていたイメージを壊し、新たな人物像を知る切っ掛けにもなってくれた。こういう視点から時代小説を描ける木下先生の作品、今後も読んでいきたい。
2023/06/21
ケイ
宇喜多直家。当時の時代物を読めば必ず出てくるが主役級でなく、今ひとつ良くつかめない男。美談や武勇が秀でてあるわけでもなし。なんとなく食えない男だというイメージばかり。そんな男とその娘たちに焦点を当てた短編6つ。時系列がバラバラなのが、かえって楽しかった。こんなだったのかもしれないと思わせてくれた。魅力的な登場人物2人~島村観阿弥と継父中山備中がキーパーソンとして登場する時は大変に魅力があるのに、彼らにさらに焦点が当たった時の人間臭さに触れると魅力が減じた。同様に宇喜多直家についても知らぬままが良いのかも。
2020/03/13
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