春の庭 (文春文庫 し 62-1)
春の庭 (文春文庫 し 62-1) / 感想・レビュー
さてさて
“もともと家を見るのが好きだったんです”、という柴崎さんが家の描写にこだわった表題作含め四つの短編から構成されたこの作品。そこには、いかにも芥川賞作家さん的こだわりの先に書き上げられた物語がありました。家を『観察』する西を『観察』する太郎という構図、それを読書によって『観察』する読者というなんともシュールな構図がそこに浮かび上がるこの作品。小技の効いた表現や、まるで映像作品のような描写が強く印象に残るこの作品。何か大きなことが起こるでもない淡々とした描写の中に人よりも家の存在が強く印象に残った作品でした。
2023/02/11
absinthe
主人公の名を目立たない「太郎」にしたのは、無個性にしたかったのだろうか。主人公は青い家といったところか。キュービズムみたいに家をいろいろな角度から眺めて存在を際立たせている。こういう手法は面白いな。かつて輝いていたのが色あせていくのを淡々と見守っているような読後感。
2024/03/21
ふう
「春の庭」美しいタイトルと物語がどうつながっていくのだろうと期待しながら読み始め、途中で何か危ない気配を感じ、でもとくには何も起こらずに終わりました。何も起こらずに…。でも、登場する人々の心の中では親子の関係や子ども時代の記憶など様々な思いが交錯し、周りから見ると他者の生活はこんなふうに見えるのだろうなと感じました。他の3篇も都会のアパートの窓から見える街の描写を中心に、生きることをあえてドラマティックにではなく静かに見送っているようでした。なので、わたしも彼らに静かなエールを送りました。がんばって、と。
2017/12/01
コットン
写真集『春の庭』をモチーフに、世田谷という場所の興味ある建物を(偏愛的に)観察する西さんを同じアパートの太郎目線で話が進んでいく。作者自身が実際ナビの試験走行が行われたと言われていた世田谷という場所の選び方や、物語が太郎目線から変わっていく辺りが面白い。
2018/07/29
★グラスハート★
2.0 芥川賞受賞の表題作と3編の短編。 どうでもいいことに振り回されている感じの出来事が満載。自分が興味あることは他人にとってはどうでもよくて、他人が興味あることは自分には興味がないってな感じで日常は成り立っている。 柴崎作品ってほんわかしているイメージ。
2021/08/23
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