惑いの森 (文春文庫 な 69-2)
惑いの森 (文春文庫 な 69-2) / 感想・レビュー
ケイ
短編50個 ゾクリと冴える狂気、抱える苦しみ、不安定さが全体に散りばめられている。『Nの...』で始まる短編が、Nの憂鬱、失踪、逮捕、裁判、釈放、そして後書きまで。作家自身をモデルにしたかのようなNには、鬱々とした荒々しさに共感した。『タクシードライバー』最後の優しさにじ~んとくる。『願い』顔のない女の子の恩返し。『老人とネコ』結局、互いしかいないのか。しかし、心は温まる。『Apple』英語を話すようになった女の子。『狭い部屋』蹴った後の柔らかい感覚。『片隅で』アリに襲われそうなメスセミの快楽
2018/11/17
かなっぺ
50の短編のなかのNシリーズ、それまでの混沌とした暗く物悲しげな感じが打って変わって、面白すぎた!声を出して笑ってしまった。もうー、これはびっくらこいた!(◎_◎;)『処刑器具』は実際の映像が、大昔そのような処刑器具があったと知っていたのでおおーっとくるものがあった。タクシードライバーで、時間に支配された主人公がいた。私の夫が子供の頃机の上に何時に◯◯へ行き、何時に◯◯へ、と秒単位に書かれてあったと義母がよく話すので夫よ、変になってないか?確かいつも時間に煩いけど日常生活に支障ないのかと考えさせられた。笑
2018/01/31
KAZOO
この作者の中村文則さんの作品を読むのは初めてです。かなりお気に入りさんが読んでいられるようなのでとっつきやすいショートショート作品から始めてみました。50の作品が入っていてつながりがあるようなのもありました。ショートショートというと星新一さん系列の作品などを思い出すのですがまるっきり雰囲気が異なっています。なんかまったりとした感じやよく考えるとうすら寒い気もしてきます。嫌いではないのでこの作者の長篇を一つ読んでみようとも思いました。
2018/04/19
かみぶくろ
ものすごく好みな50の作品集。長編小説で描いてきたエッセンスが凝縮されていて、中村文則テイストを全身に浴びられる。掌編はオチとキレと風刺と余韻の配分が肝だと思うのだが、この作品集はほぼほぼ余韻系。暗さと辛さと悲しさが尾を引くが、その中に微かな希望や美しさも滲み出ている文句なしの余韻。やはり、自分はこの作家の描くものが大好きだと、改めて思えた。
2019/09/02
ゆのん
約200頁の本に50編のショートショート。率直な感想を書くと、『中村文則は長編向きだな』。作品の暗さは長編でも短編でも大差なくやはり暗い。ただ、作者本人もその事を自虐的に書いているのを読んでほんの少しだが好感を持った。『暗いのを承知で書いてるなら、こっちも暗いのを承知で読んでるんだからおあいこ。』なんて変に納得してしまった。承知の上で買って読んでしまう魅力が何なのか自分でも分からないので分かるまで読んでみようと思う。
2018/01/15
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