革命前夜 (文春文庫 す 23-1)
革命前夜 (文春文庫 す 23-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
須賀しのぶは初読。なんともスリリングな小説。「時」と「場」の選び方が実に絶妙。物語は1989年1月7日、昭和天皇崩御の日に始まり、同年11月9日に幕を閉じる。主な舞台はベルリンでもなく、ライプツィヒでもなく、西側の情報がやや入りにくいドレスデンである。このセンスには、もう脱帽もの。登場人物たちはいずれも個性的(主人公をはじめ才能あふれる音楽家という設定がここで生きてくる)で、文体の持つスピード感も終始一貫して鈍ることがない。そして、音楽を表現するのも上手い。最後はミステリーの要素まで盛り込まれている。
2020/11/09
アン子
2005年に再建された聖母教会しか知らないが、真っ白い真新しい煉瓦の所々に瓦礫の中にあった黒い煉瓦が混じっている。再建には10年以上かかり「世界最大のジグゾーパズル」と言われたらしい。その周りで毎年開かれるクリスマスマーケットには世界中から人々が集まり楽しむ光景を今当時を知る人達はどんな思いで見ているのだろう。 そして、当時のドレスデンにKGBとして駐在していたプーチンが屈辱の思いでロシアに戻り、今またウクライナで自由主義と対抗している現在世界の状況に複雑な思いになる。
2020/11/13
まこみや
芸術小説、成長小説、恋愛小説、政治小説、歴史小説、そしてスパイ小説‥‥、まるで複雑にカットされた宝石のように、読み進むにつれて新しい側面が輝く。須賀さんの作品は、高校野球の小説を何冊か読んだくらいだったので、巧みなスポーツ青春小説の描き手という認識しかなかった。不明を恥じる。とにかく須賀さんの守備範囲の広さに唸った。特に音楽を言葉で表現するその筆力に感心した。いやあ、素晴らしい。
2020/02/25
あきら
読み応えのある一冊でした。 音楽、歴史に翻弄されていく若者達をすごく面白く描いています。 読んだのはちょっと前なのですが、ストーリーをまだちゃんと覚えているので、それが面白かった証拠なのかな、と思います。
2020/06/21
rico
あのとき、本当は何が起こっていたのだろう。東西冷戦末期、若きピアニスト眞山が留学した東ドイツ。表面的には秩序を保ちつつも監視者や密告者が跋扈する中、解放を求めるエネルギーがマグマのように溜り爆発寸前といった様相。仲間との交流や葛藤、圧倒的な才能への嫉妬といった、音楽を志す若者たちの青春物語は、怒涛のような歴史の奔流に巻き込まれていく。その中で彼らは懸命にあがく。眞山は多分求める「自分の音」にたどりついたはず。ベルリンの壁崩壊の映像のバックに流れる「第九」が「革命前夜」と重なる。音楽は力だ。
2020/01/01
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