山本周五郎名品館IV 将監さまの細みち (文春文庫 や 69-4 山本周五郎名品館 4)
山本周五郎名品館IV 将監さまの細みち (文春文庫 や 69-4 山本周五郎名品館 4) / 感想・レビュー
KAZOO
文春文庫から4分冊で出た山本周五郎短篇集の最後の巻です。沢木さんが選んだ作品は全部で36の短編ですがここでは「悲哀」「かなしみ」というテーマで9つの作品が収められています。既読の作品が多く再読ですがこのようなテーマで読むとまた印象が異なりました。「ひとごろし」は2回も映画化されていたようです。私はみていませんでした。最後のエッセイで山本周五郎と山手樹一郎の交情が描かれていて知らなかったことなので参考になりました。
2018/07/14
キムチ
3冊連続で読むと、病膏モウ(←差別用語だね)的な感覚に陥る。江戸・・もっとも世界的に中世が「心身共に寒く、身分の段を越える事は無知以前、絶望の時間だと改めて感じる。この作品集、男女の情愛が色濃く結集。岡場・居酒屋・・病夫、父、幼子に囲まれがんじがらめの女たち。身分という見えない鎖が縦横に張り巡らされた隙間で幽かに息をしている人々の息遣い。50歳超は「老女」枯れ木のような手足とざんバラの白髪頭。背景によく登場する老松の情景がぴったり。殆どの場面に登場する酒くらいしか憂さが晴れない。小道具の欠けた茶碗で完璧。
2022/11/11
ぶんこ
感想を書いている時「悲」と「哀」のどちらを選ぶか迷います。そんな時は自分の感じた心持ちで選んでいたのですが、沢木さんの解説を読んで「悲哀」の違いに「そうそう」と納得したのです。4巻目は女性の「哀」をテーマにした作品集と思っていたのですが、途中から男性の「悲」も感じられる作品が出てきました。見事に「悲哀」が書き分けられています。私は女性だからか「野分」や「墨丸」に心惹かれました。ただ流産を繰り返す妻を持った夫側の心情を描いた「並木河岸」にも感動しました。沢木耕太郎選のシリーズが終わってしまい残念。
2019/03/29
kawa
沢木耕太郎選最終巻。どの作品も味わい深い逸品。特に周五郎版「坊ちゃん」の趣きの人物造形を主人公に据え、主従を超えた友情を描く「桑の木物語」が今のところのマイベスト短編。
2022/06/25
島の猫
「悲哀」がテーマのⅣ。岡場所といえば今でいう風俗といったところか。ここでは男女共に現実世界で傷ついた心を埋めるために、居る。それがある程度癒えると男女共に去っていける。しかし女性は生きることとその仕事が同化していてどこにもいけない。彼らはそれが一時のものだと知っているから互いに深入りしないように瞬間的に優しさを交換する。そんな場所で出会った男女が一生を添い遂げるという夢は難しいからこそ、魅力的に見えてしまう。強い引力が、真心か利害かを、冷静に見ることを不可能にさせる。だからこそドラマティックだ。
2023/03/06
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