フランダースの帽子 (文春文庫 な 44-6)
フランダースの帽子 (文春文庫 な 44-6) / 感想・レビュー
優希
不思議な感覚に陥りました。実在の場に繋がりつつも、不確かな「絆」が描かれています。人は皆、どこかで何かしらの嘘をついて暮らしていたのですね。おぼろげながら浮かび上がる物語が美しいです。
2019/04/16
エドワード
ある日届いた今は亡き弟あての手紙が30年前の小学生の頃を呼び覚ます。年子の弟、塾で知り合った友達、壁に貼ったポンペイの写真。美術を学ぶ高校生の私が描いた「フランダースの帽子」、交流展で売れ、行先不明だった絵との数奇な再会。「かみのふね」読書会。雲の事務所という名の老人ホーム。誰もがつく何気ないウソ。ほんのちょっと自分を印象づけたくて脚色する、たわいもないウソ。最後にえっ?となる、懐かしく、ほろ苦い読書の快楽。外国の人名地名の妄想の遊び。うん、確かにそうだったな。カイロは神の思し召し、シャンゼリゼは極楽だ。
2019/02/21
冬見
長野まゆみだからこそ成立する話だなあと思った。初期の幻想を軸にした物語から徐々に現実世界へ向かいながらも、物語にはなお幻想の空気が漂う。この人の持っている幻想の力はとても強くて、どんどんそちらへ引っ張られてしまう。いつもはそれで良い。そういう物語だから。けれどこの作品は、そうなんだろうな、とぼんやり納得させられかけた瞬間に、ぱちんとしゃぼん玉が弾けるように現実を見せてくる。驚いている間に幕は降り、やられた、と立ち尽くす。そうして笑ってしまう。わたしは、この人の見せるウソが大好きなのだ。
2019/02/12
たけはる
「たくらみに満ちた短編集」ということで、誰かが誰かに成り代わっていたり、偽っていたりと、ちゃんと考えながら読まないと少し混乱しました(それこそが本書の醍醐味でもある)。作中では、「ノヴァスコシアの雲」が一番長野さんらしいなあとにんまり(オチが)。あの老婦人になら騙されてみたい。 「シャンゼリゼで」の読書会、参加してみたいなあ。
2019/04/06
芙蓉
短編集。読んでいるうちにいつの間にか現実から1、2歩くらい離れたところに連れていかれる様な読後感「少年アリス」とか「あめふらし」「左近の桜」などよりは現実寄り(しかしこの現実は白昼夢なのかもしれない)
2020/02/10
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