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冬の光 (文春文庫 し 32-12)

冬の光 (文春文庫 し 32-12)

冬の光 (文春文庫 し 32-12)

作家
篠田節子
出版社
文藝春秋
発売日
2019-03-08
ISBN
9784167912376
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冬の光 (文春文庫 し 32-12) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

これまでの篠田節子とはかなり違った印象だ。けっして悪い意味ではないけれど、作家も年をとったかと思う。かつての直木賞作『女たちのジハード』の若さゆえのもどかしさはここにはない。若き日を経過し、壮年期も経て、初老の域にさしかかろうとする男女を描く。様々な意味で人生の終焉を前にした寂寥感に溢れる小説だ。こんな作品を書くようになった篠田節子にあらためて感無量の思いを抱く。康宏と紘子の青春の光芒が、自身のその時代と重なるからでもある。私たちにとって、その終わりはどんな形をとりうるのだろう。それが篠田節子の問いだ。

2019/09/06

あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...

高く評価している方を何人かお見受けしたが、なるほど納得!自分もこの手の作風はドンピシャで、今年のトップ10入りを検討中~♪バブルの頃、家庭を顧みることもなく、それが当たり前と仕事に邁進した一人の男。四国遍路を終え、東京へ向かうフェリーから冬の海へ消えたところから物語は始まる。確かに家族からすれば善き夫、父親とは言えなかったのかもしれない。決して立派とは言えず、赦されざるべきなのかもしれないが、自分にはそこに等身大の男の生きざまを見たような気がしてならない。家族への想いに満ちた冬の光が切なく尾を引く。

2020/12/23

ふじさん

四国遍路を終えて帰路、海に消えた父。彼には、高度成長期の企業戦士として、専業主婦の妻に支えられた家庭人としての顔と40年に及ぶ恋人・笹岡紘子との許されぬ関係があった。四国で父の巡礼の足跡を辿った次女・碧は、父親をある事実を知る。夫婦、親子、男女関係の先にある人間関係の危うさや脆さを様々な視点から描かれた作品。長い人生を生きて来た者に様々な思いを抱かせる、考えさせられる傑作。最後に、次女・碧によって、父親の死んだ真相が明らかになり、少し心が楽になった。

2022/03/08

まこみん

62歳の康宏は四国遍路の帰途フェリーから海に消えた。次女の碧は、家族を欺いて愛人と関わり続けていたという父の痕跡を辿っていく。妻の立場では許しがたい長年に渡る裏切りなのだけど、康宏にとっては今の家族があってこそで、純粋過ぎて年取っても寛容さが育まれなかった紘子とはたとえ結婚しても上手くはいかなかっただろう。東日本大震災の中ボランティアをやり抜き帰宅した康宏は後の人生に虚無感を抱く。読む読者の年代、性別、立場によって様々な見方になる深い一冊。私は只々やるせなさで胸が詰まった。

2019/06/05

naoっぴ

これはもしかしたら女にはエゴにしか見えない男のロマンというものか?物語は自死した父の足跡をたどる娘と父康宏の、相反するふたつの視点から描かれる。康宏にとって社会的野心や憧れ続けた女性との関係はどこまでも崇高であり大切な人生のひとつ。一方、妻や娘にはそれは浮気性の駄目男としか映らない。男女のとらえ方の違いか夫婦の相性の問題か、傷つけた側が悪いのか。心の中で相反する気持ちに右往左往する読後。実に興味深い。男性側の感想も是非知りたいと思った。

2019/05/12

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