ロベルトからの手紙 (文春文庫 う 30-2)
ロベルトからの手紙 (文春文庫 う 30-2) / 感想・レビュー
KAZOO
内田洋子さんのイタリア庶民の生活を描いたエッセイというかちいさな物語のような話が13楽しめます。それにしても行動的で半年間船の上で過ごしたりもしています。表紙の木彫が印象的で足にかかわる話がほとんどです。内田さんはすぐにイタリア人と親しくなったりしてその人の身の上話などをよく効かれたりしています。本当にイタリアに溶け込んでいるのですね。
2020/02/03
のぶ
内田さんのイタリア暮らしを綴ったエッセイ集。過去に「ジーノの家」というエッセイを読んでいるが、その流れの内容だった。内田さんのエッセイは、観光やグルメの事を書いてあるような甘口のものではなく、現地の人との触れ合いを中心としているので、しっかり読まないと人間関係が分かりづらい。もちろん説明はあるのだが、辛口の印象を受ける。ただ人との繋がりを通して、イタリアというものが浮き彫りになってくる。読んでいる時は気づかなかったが、どれにも足をテーマにしているようだ。再読した際には気を付けて読んでみたい。
2019/06/14
aika
長靴の形をしたイタリア半島中に散らばる13編の「足元」を基調に、静かな愛で以て照らし出された、人生の翳り。身体の不自由な息子をもつ老母、ユーゴスラビアからイタリアへと渡ってきた移民の女性など、耐え難い日常という海の中をたくましく泳いでいる人々ひとりひとりの姿が、目の前に浮かぶようでした。決して作中に悲愴感がたち込めるのでなく、登場人物それぞれをただじっと見つめる文章と、表紙にある羽のついた足の木彫りに、ままならない人生を送る彼らへのエールを感じます。
2023/05/24
イオちゃん
40年イタリアに住み、色々な暮らしを経験しながら集めた13の実話集。半年間の船上生活後に陸に上がってみると…。パリへの寝台特急での驚愕な出来事。ヴェネツィアでのひっそりしたクリスマス。交差点で老婆に手を貸しながら聞く彼女の人生。寂寥感が漂い、切なさが残る話もあれば、苦しみから解放される話もある。いづれにしても、クールな筆致で切り取られたイタリアがここにある。
2019/06/04
はな*
イタリア在住40年の内田さんがミラノで出会った13人を綴った随筆。その13人の人生が濃い。それぞれの人生をそれぞれ1冊の長編物語に描けそうなくらいに濃くて深い。なんともドラマチック。内田さんの随筆を読むたび思うのは、内田さんが特別な人たちに出会ったわけではなく、私が今日すれ違った杖をついたおじいさんや腰の曲がったおばあさんの人生にも数々のドラマが秘められているのだろうなということ。この世の中はたっくさんたくさんのドラマで出来ている…と、つい大げさなことを思ってしまうのも、いつものこと。
2020/12/10
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