マチネの終わりに (文春文庫 ひ 19-2)
マチネの終わりに (文春文庫 ひ 19-2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
蒔野と洋子の間に流れた時間の記憶の物語。彼らが5年半に会ったのはたった3度に過ぎない。永遠の恋が成立するには十分な時間だ。その儚さと崩落性こそが、切なくも美しい大人の恋愛小説を結晶させるのである。タイトルにとられた終章の余韻は、まさに恋愛小説の白眉といっても過言ではない。それを語る文体もまた、素材と呼応するかのように、時に流麗でありながら、同時に構築的である。蒔野と洋子の造型もまたそれぞれに鮮やかな像を結び、内的に共鳴し共振しながらも、1つに結像することがない。明らかな欠点はあるが、堪能させる恋の物語だ。
2020/03/27
nanako
読み終えるのにかなりの時間がかかりました。物語の中盤、三谷のある行為によって話が大きく展開するのですが、それがあまりにつらくて読み進めるのが辛くなってしまって…。そこでかなりの時間読むのを中断、三か月くらい経ってしまいました。結果的にラストは私が望んでいたものとは違いましたが、それでもやはり最後まで読んでよかったです。物語がどう進んで欲しいと願うかは、その人の恋愛観、人生観によるものだと思いました。小説を読み終えた後、映画も観に行ってきました。小説のほうが深いですが、映画の方が好きな方もいるはず、かな。
2019/11/15
そる
切なくて辛くて身悶えしちゃうような大人の恋愛。でも身体も重ねてないし気持ちだけでずっと想い続ける、純愛で素敵で美しい。なのにどうして引き裂かれるの。全てはあいつが悪くてそこから年齢的に後がない事や運命のいたずらが災いするがそれを受け入れてしまうのも、洋子も蒔野も大人すぎる。でもこの歳になったら諦めることもあるんだよな⋯。同年代なので余計共感できました。「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。(後略)」
2019/11/13
koji
8月に読んだ「三島由紀夫論」から早4冊目。平野さんにのめりこんでいます。本作も秀作ですが、解釈は難しく、この感想に至る迄何度も書き直しました。それは恋愛小説として考えると、ラストの後の展開は結婚になるが、それではしっくりきません。そこで、これを2人の人生の救済の物語と捉え直すと、ラストが過去を変える未来に繋がることを実感できました。即ち「たった3度しか会ったことがな」い恋愛ではなく、会った3度の濃密な時間、更に会わない時の豊穣な言葉のやり取りが2人を数々の試練から救済したということです。圧巻の平野ワールド
2023/11/15
どんふぁん
2019年11月16日読了。すっごく大人の恋愛だなぁ。途中イラク戦争や東日本大震災の話とか辛かった。そして、キリストの話は全くよくわからなかった。とにかく出てくる話がワールドワイドで複雑で大人だなぁとただひたすら思った。中盤は苦しかったなぁ。ふたりに耐えろと応援してました。
2019/11/16
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