ひとり旅立つ少年よ (文春文庫 テ 12-6)
ひとり旅立つ少年よ (文春文庫 テ 12-6) / 感想・レビュー
ケイ
奴隷制度があった時代、白人の少年が経験する試練。しかし、同じだけの善意と優しさもうけとる。そのどちらもが彼の強さとなる。この時代は、詩人のホイットマンや、ディケンズが生きていた頃で、作者は彼らをも特別出演させる。この作品は、アフリカ系の人にはどう響くのだろう。トニ•モリスンが「アンクルトムの小屋」の中の描写の一部を引いて黒人に対しての白人目線だと書いているものを読んだことがあるが、この作品も十分ではないのだろうか。個人的には「地下鉄道」よりこの作品により訴えを感じた。テランは、今、一番好きな米作家。
2021/03/10
アン
ニューヨークからミズーリまで、12歳の少年チャーリーの成長と贖罪の旅。詐欺師である父親が奴隷制度廃止運動のためと偽り、福音伝道師から騙し取った大金。彼が父親に協力したのは、精神科病院に入院している母と暮らすためだったのですが…。父親への怒りと愛、深い喪失と孤独、不公平な社会、邪悪と善良な心。チャーリーが接する様々な階層や立場の人物、襲いかかる苛酷な出来事が硬筆な筆致で容赦なく描かれ、運命の渦に呑み込まれていくよう。旅のはじめ、チャーリーが異彩を放つ紳士から手渡された詩の一篇が深い余韻を残します。
2020/01/13
のぶ
良い話だった。舞台は19世紀まだ奴隷制度の残っているアメリカ。12歳のチャーリーの父が二人組の男に殺された。父は詐欺師だった。父は奴隷解放運動のための資金だと偽って、教会から大金を巻き上げた金を持っていた。チャーリーは父の悪行を償うため、このカネを奴隷解放組織のもとに届けようと、ひとり旅に出た。だが、この大金を狙ってチャーリーに追う男たちがいる。ほかにも様々な難事件が起きるがその度に切り抜けていく。全体を通して、チャーリーの成長が描かれて、勇気に感動した。テランの代表作に入れていいだろう。
2019/09/24
あさうみ
ただ、ただ素晴らしい。南北戦争直前、黒人奴隷差別の背景が色濃くある。そんな乱世で詐欺師の父をなくし、心神喪失した母から「ひとり旅立つ少年」の物語。道中、命を狙われ身を切る辱めにもあうが、かけがえのない人たちに出会い、優しさと愛、信念を知る。少年を青年へ導く感動が胸に迫る。ずっと大切にしたい良き本に出会った。おすすめ!
2019/08/24
stobe1904
【ボストン・テランの新作】舞台は奴隷制度が残る19世紀末のアメリカ。詐欺師の父親と一緒に詐欺を繰り返していた少年チャーリーだが、父親が殺害されたことを契機に罪滅ぼしとして詐欺で稼いだ大金を奴隷反対派に届ける旅に出た。旅の途中で出会う善意の人々の支援を受けながら、チャーリーの大金をねらう悪党たちや奴隷賛成派の禍々しい暴力に立ち向かうチャーリーの姿は、圧倒的な共感力を持って迫ってくる。少年や黒人たち社会的弱者が、けなげにそして気高く生きる姿に力をもらった。素晴らしい読書体験となった。★★★★★
2019/10/17
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