あしたの君へ (文春文庫 ゆ 13-1)
あしたの君へ (文春文庫 ゆ 13-1) / 感想・レビュー
イアン
★★★★★★★☆☆☆家裁調査官補の成長を描いた柚月裕子の連作短編集。福森家庭裁判所に配属された新人の大地は、少年事件や離婚調停を通じて一人前の家裁調査官を目指す。お仕事小説としての魅力もありながら、各編とも依頼者の〝嘘〟が意外性を伴って胸に響く構成となっている。特に親権を巡る離婚調停を扱った『迷う者』が深いなと感じた。作品中では言及されていないけど、大地に対して不意に「親ってなに?」と訊いた10歳の少年は、実は全てを知っていたんじゃないかと思う。「恋愛は旅行、結婚は移住」というのも言い得て妙だなと思った。
2022/03/04
KAZOO
柚月さんの新しい分野のお話です。検事や検察事務官の話のシリーズがありましたが、今回は家庭裁判所の調査官の話です。なりたての調査官補という実地研修の場での話が5つ収められています。家庭裁判所の話なので、少年少女や離婚調停という分野が多いようです。主人公が仲間や調査官の助けを借りながら問題に対応している姿はある意味成長小説と言えるのでしょう。上司の真鍋という人物の指導が心にしみます。それにしても柚月さんはよく調べられていると思いました。
2022/11/07
Kazuko Ohta
こういう仕事なのですね、家庭裁判所調査官。その見習いは調査官補で、上司から“カンポちゃん”と呼ばれる面々のうちのひとりが主人公。窃盗やストーキングで捕まった少年少女、精神的苦痛を訴えて夫と別れたい妻、親権を争う夫婦などなど。タイトルの「あしたの君」とは、子どものみならず大人も、そして主人公らカンポたちのことも含んでいるのでしょう。処分は適当に決めてもたぶん通る。でもそれが明日の君の、そして自分の在り方に関わる。「人に迷惑をかけることと、人に頼ることは違う」という一文がじんわりと沁みる。頼ってもいいんだよ。
2021/09/04
matsu04
若くて生真面目な家裁調査官補の成長物語。うーむ、これは良い。いかにも著者らしい作品だ。一所懸命な若者の姿に心を打たれる。まあ実際にはこの仕事、そんな甘いものではないとは思うのだけれど。
2020/03/01
ゴルフ72
柚木作品久しぶり! まさしく明日の君たちへはそれぞれの問題を抱え、苦悩する人達や周りの人に家庭裁判所調査官補 望月大地から真実に辿り着き、そして新しい道標と自らを成長する物語だ。
2019/12/04
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