その男(三) (文春文庫 い 4-133)
その男(三) (文春文庫 い 4-133) / 感想・レビュー
のり
徳川の世から明治へと時が移るが、中央政府も磐石には程遠い。地固めの政策にも方々から反発。更に西郷隆盛の求心力を削ぎ落とそうとして薩摩軍人の怒りをかう。そんな中「杉虎之助」と「桐野利秋」の再会で思わぬ事実が判明…鹿児島へ渡り、西南戦争へと続く日々を共にする。西郷の人柄に惚れ込んだ虎之助。西郷の言葉通りに日本人同士で最後の戦となったが、あまりにも激しすぎた。彼等の分まで生を全うした虎之助は天晴れだった。
2020/01/28
優希
徳川幕府は終焉を迎え、明治へと時代は流れていきます。虎之助は剣を捨ててしまうのですね。脱罰とした日々から穏やかな日々へと変えたかったからでしょう。しかし運命の悪戯か、虎之助は再び波瀾の道へと引き込まれるのは、時代が虎之助を飲み込んでいるからでしょう。その人生はまさに激動と言えますね。
2023/02/26
タツ フカガワ
虎之助にとっての江戸は剣友伊庭八郎の訃報で終わり、明治は西郷隆盛の側近で陸軍少将となった中村半次郎改め桐野利秋との再会で始まる。やがて征韓論争で西郷とともに桐野も下野するが、その鹿児島に虎之助が現れる。この完結編では桐野、西郷が主役級の存在感で読ませます。また、さらに豊満になったお秀の神出鬼没ぶりが楽しいし、昭和まで生きた虎之助翁が池波さんを“正坊”と呼ぶ終章まで、サービス満点の幕末小説でした。
2021/05/03
Kira
幕末維新の動乱を見届けた男の物語第三巻。この巻では主人公の杉虎之助は、動乱のさなかに息をひそめて暮らすうちに、剣友伊庭八郎の死を知る。維新後、「開化散髪処」を営み始め、桐野利秋(中村半次郎)と再会する。やがて、西南戦争では西郷隆盛の世話をする。虎之助のたどった道は数奇としかいいようがない。本書に描かれている半次郎の生きざまも、やはり熱い。幕末維新を描いたいくつかの作品とリンクしているこの作品に、池波氏は深い愛着があったという。
2022/07/30
ぶんぶん
【図書館】長い話が終わった、読み終えて何の話だったのか、余韻に浸る。 つまり、激動の幕末・維新を駆け抜けた一市民の回顧録だったのではないだろうか。 杉虎之助の眼を通して観た真実の物語(実はフィクション) モデルが三人いたと言う事で、真実に近づけている。 著者自身、曾祖母の登場によって、ますます現実感を増す。 結局、伊庭八郎、桐野利秋、西郷隆盛の三人の行動を追う事で迫力ある群像劇を奏でる事に成功したものと思われる。 池波氏の書き方で無ければ、退屈して打ち捨てた物でしょう。 幕末歴史書としても面白い話でした。
2020/10/15
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