カブールの園 (文春文庫 み 60-1)
カブールの園 (文春文庫 み 60-1) / 感想・レビュー
南雲吾朗
表題作「カブールの園」。アメリカ移民1世と2世の民族意識の隔絶。母国語、風土の違いによる意識・伝達の違い、感じ方の違い。人種差別。アイデンティティーの乖離。それらの間で揺れる人間像。そんな中でも、アメリカ人として生きていこうと必死になる姿が痛ましい。物語りの中に出てくる風土・言語の考え方・捉え方が、私にっとって、すごく納得がいった。「言語の持つ抒情の体系は、風土が変わっても容易に変貌しようとはしない。」以前から、自分で感じていた事をこうも的確に言葉にされては…。(続く)
2020/04/18
路地
職業柄、職場に多い帰国子女や日系人が抱えているかもしれないアイデンティティに対する疑問や苦悩を垣間見る読書体験だった。実際に住んだこともない自分には知り得ない(知ろうとしてこなかった)差別の実態と、それが間接的に親子関係にも影を落とすことになる様子に胸が苦しくなるが、折り合いをつけて生きる様子に強さも感じる。
2023/01/30
hanchyan@だから お早うの朝はくる
表題作は、自分を見失いそうになった主人公が改めて己のルーツに目を向け、自己を見つめ直すはなし。併録作は、正に懊悩の最中にいる主人公が己の半生を振り返るはなし。共通するのは、自分が今ここに有るのと同様に歴史が有る、という再認識だ、今ここに自分が有るためには自分を産んだ親が必要であり、ジーちゃんバーちゃんにも親がいて、さらに……と。当たり前のことではある。けども、我々は各々のルーツについて立ち止まって考えることは希だ。何よりも速度に価値を置き停滞を許さない社会に生きてるから。だこらこそ、この物語が刺さる。
2021/03/27
hnzwd
人種、文化、ドラッグ等々について考えさせられる中編二作。SFの印象が強かった宮内さんですが、、ゴリゴリの社会派。子供時代に受けたイジメと、実母とのギャップでのPTSDとか、色々、考えさせられます。
2020/04/26
おうつき
アメリカに住む日系人の女性の視点から、日本語と英語、異なる二つの言葉による自己の確立を描いた物語。こういった形でのアメリカの描かれ方をしている作品を見たことがなかったので、とても興味深かった。収録されている二作とも、日本にルーツがありながら米国人でもある人の立場からアイデンティティに悩む精神性が繊細な視点で表現されていた。
2020/01/24
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