美しい距離 (文春文庫 や 51-2)
美しい距離 (文春文庫 や 51-2) / 感想・レビュー
しんごろ
妻に対する彼の15年の愛と想いがひしひしと感じる。病室で会うときの挨拶がすごく素敵で仲のいい夫婦だなと実感。愛する者が亡くなるときはいつかある。(できれば亡くなるのは自分が先だといいんだが)後悔はきっとでてくるだろう。しかし後悔を無くすことはできなくても、少なくはできるだろう。これから先、そして今を、愛する大切なパートナーと歩んでいきたいと思わせる物語。タイトルに偽りなしの夫婦の素晴らしい“美しい距離”でした。
2020/01/28
さてさて
“末期がん”の妻を看取る主人公の『夫』が、妻と知り合った時からその最後までを『夫』の内面視点で描き切ったこの作品。そこには、確実に迫り来る妻の『死』に向き合う『夫』の様々な感情の推移が淡々と描かれていました。結末が分かり切った物語の中に、それでも『夫』と共に『希望』を見出したくなるこの作品。『介護』、『余命』、そして『延命治療』といった言葉の重みを改めて噛み締めるこの作品。予定されていた展開を見る結末にも関わらず、『がんは、それほど悪い死に方ではない』という言葉に妙に納得をしてしまう素晴らしい作品でした。
2023/07/01
おしゃべりメガネ
四年半ぶりの再読で、改めて深く考えさせられる作品だなぁと。妻が癌に侵され、延命治療もしないと決めた夫婦の物語です。「来たか」「来たよ」のシンプルなやりとりが月日とともに切なく感じてしまいます。妻を看送るとなったトキ、果たして自分はどう振る舞えるのか、年齢は関係ないにしても四十半ばになると、色々とリアルに考えてしまいます。妻がどんどん死に近づいていく描写がなんともリアルで、切なかったです。この夫婦のありかたが決してベストかどうかはわかりませんが、少なくとも夫は妻の思いをしっかりとくんでいたのではないかと。
2021/05/30
hiace9000
いわゆる余命宣告をされないと、人は常に死と向き合って生きていることを忘れてしまいがち。末期癌を患う最愛の妻を看病し看取った夫。その繊細なる内面を丹念に掬い上げ、死と向き合い、限りある生のなかで揺れ動く妻や家族や医療者たちとの「距離」を静かに丁寧に描きあげる本作。この物語が単なる"お涙頂戴闘病記"と思えないのは、いかなる立場・状況にあってもひとりの個として生きる選択や意思を、同情を排し認め、凛として尊重しているからに他ならない。近くても遠くても、人を思い愛する永続性ー、その距離は切なくも純粋でやはり美しい。
2023/03/07
馨
お気に入り様のレビューを読み購入。末期癌で入院中の妻と、献身的に看病する主人公の夫。出会う前離れていた距離が結婚し近づき、妻の病気で離れては近づき、亡くなったらうんと離れ、死んでからもまだ動き続ける。私も亡くなった家族のことをあまり思い出さなくなったなと思いきや突然元気な姿で夢に出てきてくれたりするから距離が近くなることが何となくわかる。人は全員絶対いつか死ぬ。死んだ時また距離が近くなる。
2023/06/08
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