最愛の子ども (文春文庫 ま 20-2)
最愛の子ども (文春文庫 ま 20-2) / 感想・レビュー
なる
甘美でスタイリッシュな、そして限りなくリアリティのある高校生女子たちの日々が絶妙な筆致で描かれている。ここまでつややかで、あでやかな文章に出逢えるとは。自我は形成されつつも、あやうい不安定さで擬似家族をする三人の女子と、またそれを取り巻く友人たち。時には外敵と戦いながら、時には内面と向き合いながら、川を流れる葉っぱたちは少しずつ外界へと運ばれて行く。現代らしさを織り交ぜながらも極端には振り切らない年代の描写には脱帽するしかない。彼女たちは大胆に生きて行くだろう。汚れなきものを踏みにじるステップで。
2020/11/19
ゆきらぱ
何年も忘れていた自分の高校の校舎の中、校庭を思い出す さらにかつては「わたし」の主語も高校の間は自然に「わたしたち」だった事も思い出した 不思議な気分になった
2020/05/21
ネムル
三人の疑似家族をめぐる、友愛ともじゃれあいとも官能ともつかないスキンシップは、同性愛やレズビアンといった安直な決めつけをしなやかに斥ける。大人の既成概念な社会を必要としない。そんな青春小説らしい甘くも苦いエピソードの数々は、ほぼ「わたしたち」の豊か過ぎる妄想に支えられている。油断がならないというか眉唾というか、「疑似家族」の物語でありながら、「わたしたち」の物語でもあることが、地味にささってしまった。社会の門前でたたずむか、くぐらずに道なき道を踏みにじり行くか。危うくも豊かで、本当に素敵な作品と思った。
2022/04/26
あ げ こ
「わたしたち」は気ままに、身勝手に残酷に、夢を見る。無責任なほど自在に、けれど存外な真面目さを以って、「わたしたち」は夢を見る。割り振って、決めて、解釈して、夢想して、補完して、甘く、幸福に、理想的に脚色して、自分たちにとって最上の、物語を作る。それは何というか、逃げ場と言われても仕方がないものなのだけれども、逃げ場としてだけ、必要された訳ではない。もっと重要で、もっと密かで、濃くて狭くて親密で、複雑で。それさえあれば大丈夫、と言うような、それさえあれば、何も必要としない、と言うような。「わたしたち」の。
2020/05/20
ネムル
読書会にむけて再読したが、しみじみ泣けるね。しかし、生徒を優しく見守る端役の先生になぜか共感して読んでしまう。
2023/02/23
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