飛ぶ孔雀 (文春文庫)
飛ぶ孔雀 (文春文庫) / 感想・レビュー
rico
石切場の事故。燃えにくい炎。祭り。火を運ぶ娘達。襲いかかる孔雀。頭骨を洗うラボ。朧げに物語らしきものの輪郭は見えはするが、それは次々繰り出されるイメージの奔流に飲み込まれていく。例えば「和」要素を融合したボスやブリューゲルの絵を次々と見せられているような。火は生命?燃えにくいって生命力が衰えてることの暗喩?そんなありきたりな解釈を寄せ付けない何かがある。正直難解でともかく読んだって感じだけど、読むのをやめられなかった。時間軸や人物を整理すれば何か見える?ここには確かに「魔」がいる。再読するには勇気が必要。
2024/10/13
もりくに
伝説の寡作の(本人によれば、子育てなどに手を取られ)「幻想」小説家の名前は、その分野の小説を全く読まない私でも、仰ぎ見る感じがあった。偶々、図書館の棚に鎮座していて、思わず手に取ってみて、幻想的な表紙絵(早逝の天才銅版画家・清原啓子さん)を含む装丁のカッコよさに惹かれて、読んでみたが。文章は簡潔で、むしろスラスラと読んでいけるのだが、いつもは、情景が立ち上がって動き出すのだが・・・何と言っても、いきなり「シブレ山の石切場で事故があって、火は燃え難えなった」と始まるんだもの。思いっきり振り回された。降参!
2024/07/16
まさ
これは断片的に読んでもわからないなぁ。一気に、しかしきちんと咀嚼して読まないといけない。この作品の世界のあちこちで起きていることを、イメージを膨らませながら読み進める。そうすると自分の世界との接点が表れるように思う。帯にある泉鏡花文学賞ほか三冠達成に惹かれて手にしたけど、その隣に書かれている、金井美恵子さんの「ただ心して、読むべし。」の言葉を肝に置いて再読しなければ!
2021/01/15
Shun
石切り場での事故以来、火が燃えにくくなった世界を舞台に不思議な物語が開かれる。この世界では火種を大切に扱い、それを売買する生業さえ存在し独創的な幻想小説と言える内容。本作は泉鏡花文学賞や日本SF大賞などを受賞していますが、今回はあまり物語に入っていけずにとりあえず読了した形に。しばらく熟成させ時機が来た時の再読候補とします。
2020/11/25
あ げ こ
既にそこにある、出来上がっており、構築されており、存在している、一つの世界。めくるめく彷徨。数多の声と光景と記憶。完全に知らない訳ではない。既視感。違和感。居心地の悪さ。不安。めまい。終始つきまとう。その入り乱れている事。交錯している事。隔たれている事。同時進行である事。理。決まり。法則。因果。各々の役割と退場。当然のように、明白であり、ごく自然な、周知の事であるかのように語られ続ける。縦横上下表裏、膨大なすべてを網羅し、把握する者の落ち着きと平静さを以って。現のそれではない、奇異なる領域に属する事ども。
2020/12/20
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