辺境メシ ヤバそうだから食べてみた (文春文庫)
辺境メシ ヤバそうだから食べてみた (文春文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
高野秀行の辺境奇食(ゲテモノ喰い)紀行。彼は「子どもの頃から胃腸が弱く、好き嫌いも多かった」と言うのだが、どこでどうタガが外れたのか、世界を股にかけての奇食・珍食三昧。ゴリラやチンパンジーはもちろん(文化人類学者の梅棹忠夫氏でさえ猿は食べられなかったそうだ)、サソリやムカデ、ワニ、ピラルク、ヤギの糞のスープから、果ては胎盤(人間の)餃子に至るまで、とにかく東に珍しいものがあると聞けば食べに行き、西にこんなものを食べるのかというものがあればそれも試食し、もうありとあらゆるゲテモノの類を食べ尽くすの記。
2021/08/20
ニッポニア
全くどうかしている、考える前に食べている。生物としての本能か。めちゃくちゃ面白い。以下メモ。ゴリラを対等な戦いで狩る原住民。「ゴリラは保護動物だ、狩りはいけない」と言いながら、観察中近づきすぎて危険になりゴリラを銃殺するドクターよ。疲労回復効果、砂漠のスーパー甘味、デーツ。店先の芋虫を調理済みだと思いかじって、売り手のおじさんに驚かれる。ラクダの乳ぶっかけ飯、現地では案外行けるのかもね。カートという葉っぱを噛むと多幸感、カート宴会、夜明けの迎えカート。タランチュラの素揚げをみて、思わずバスを降りる著者。
2024/05/25
molysk
世界の秘境を飛び回ってきた筆者が出会った、辺境のヤバい料理とは。コンゴのゴリラ、タイの昆虫、ペルーのカエルといった食材は見た目からして驚きだし、韓国のホンオ、スウェーデンのシュールストレミングといった発酵食品は凄まじい臭いだ。一方で、それは日本の刺身や納豆も、立場を変えれば同じことではないだろうか。入手が容易な素材は場所によって異なるし、食料の保存に優れた発酵は先人の知恵だ。また、食事はコミュニケーションを深める機会でもある。独特な料理を喜んで食べる異国からの旅人がいれば、うれしく感じてしまうに違いない。
2021/05/05
yamatoshiuruhashi
自称「辺境探検家」が辺境で食べた現代日本人の常識から大きくはみ出す「食事」の体験談。ゴリラを食べたという話で初っ端から驚きの連続。とても食べるものの対象となるとは思われないもの、現代日本人が豊かだから食べることを忘れてしまったもの、様々な食物とその料理法、味、食感、そしてある種の「副作用」まで記されている。気持ち悪くなるような食べ物もあるが全編を通してある種の心地よさもある。それは現地の人々に溶け込み同じ物を食べているということから生まれる同質性の実感。食を共にすることは心を開くという本質的な喜びだ。
2024/01/24
こばまり
めくるめく珍食の世界。ヒトに近いものは感情的に、ヒト由来のものは生理的に無理と己の限界を知る。もはやBCとはビフォア・コロナの意かと常にコロナウイルスの影がつきまとう今、本書のような国際交流が再び叶う日はいつと寂しい気持ちにも。
2020/11/29
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