下着の捨てどき (文春文庫 ひ 20-12)
下着の捨てどき (文春文庫 ひ 20-12) / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
いい意味で何の変哲もない至ってスタンダードなエッセイです。特段大きな喜怒哀楽があるワケでもなく、淡々と筆者さんの綴る文章を追っていきます。作者さんならではのちょっととぼけた描写が時折、キモチをのんびりさせてくれます。たまにはこういう、あえて特段なにもないエッセイを読んでみるのもいいかもしれませんね。きっと作者さん自身が、とてもリラックスして書いているのかなと感じます。そもそもタイトルが中々秀逸で、他にも多数共感できる話がありました。ぼんやりとゆるく読むには最適な一冊でした。肩の力をぬいていきたいですね。
2023/07/16
nico🐬波待ち中
私も中年期に入り、こんなはずじゃなかった、と思うことが多くなってきた。私よりちょっと先を行く平松さんの”しょっぱい現実”を読みながら自分の現実と比べてみる。私から見れば平松さんには気持ちの余裕が感じられる。この気持ちの余裕がこの先を生きていく上できっと大事なんだろう。目前に立ちはだかる老いの現実にはもはやため息しか出ないけれど、少しずつでも楽しみを見つけていけたら。自分の老いと向き合いつつ、もう少しがんばってみようか、そんな気持ちにさせてくれるエッセイだった。平松さんオススメの塩豆腐はぜひ作ってみたい。
2021/05/23
nemuro
結構買っている割に既読本は少ない。果たして相性が良いんだか悪いんだか。すっかり微妙な立場の作家である。そんな後ろめたさもあって“しりとり読書”の96冊目の候補にピックアップされたのをこれ幸いにそうかそうかと選定。本棚には平松洋子の本が(本書を含めて)9冊。やっぱり既読本はなさそう。さて本書。『彼女の家出』を改題&大幅に加筆修正。常日頃、判断に躊躇し漠然とやり過ごしてしまうことってあるもので、上手い。タイトル改題支持派である。同感も多く読みやすい。本棚では小川洋子との対談集『洋子さんの本棚』もあって楽しみ。
2023/06/02
ユメ
こちらの心に寄り添ってくれるようなエッセイで、読み進めるうちに不思議と塞いでいた気分がすっきりしていった。きっと、平松さんが歳を重ねたことによる変化への戸惑いを素直に書き綴り、変化に対応してゆく道中を見せてくれているからだろう。世代こそ違えど、私もつい数年前までの自分との差に愕然とすることが増えてきた。人生の先輩がひとつひとつ新たな境地を柔軟に受け入れていく姿に、励まされる思いだ。リバティプリントが好きだという50代男性の話が印象に残っている。こんな風に歳を重ねられたら、どんなにか素敵だろう。
2021/03/27
Kazuko Ohta
そうなんですよ。下着の捨てどきってすごく悩むんです。下着代に糸目をつけずにいつでも勝負下着を身につけているような人はいざ知らず(笑)。十年以上経っても、確かにへたっちゃいるがまだ使えるよねぇ、てなものばかり。特にブラジャーは、盛ることさえ意識しなければ、ビヨンビヨンになろうとも使えるんですってば。というような気持ちから、スルーできないタイトル。老いてゆくことを悲観せずにしみじみ優しい気持ちで見つめたくなるエッセイ。映画の話も見逃せないけど、やはり食べ物の話に目が行きます。食い意地は歳をとっても収まらない。
2022/03/07
感想・レビューをもっと見る