清張地獄八景 (文春文庫 み 23-9)
清張地獄八景 (文春文庫 み 23-9) / 感想・レビュー
goro@80.7
清張愛に溢れた本書。軽く笑わせるような入りから奥に行くにしたがって段々と本性が現れてくるような見事なみうらじゅんの構成でした。苦労の末に手に入れた地位、名誉。調子に乗って愛人まで作った時から「清張地獄」が始まるのだ。本の紹介は勿論だが、TVや映画などの映像作品にも及び読後はどれから観ようかと楽しみ倍増ですよ。やはり岩下志麻vs桃井かおり「疑惑」か倍賞千恵子「霧の旗」か!清張御大の推理物しか読んでこなかったので違う作品も読みたくなった。書き続けた40年間だった。第4章扉の写真が凄すぎる。これが清張御大の姿!
2021/05/12
gtn
著者のことだから、松本清張を面白おかしく弄っているのかと思ったら違った。清張は推理作家ではなく、ホラー作家、つまり因果応報の啓蒙者であると述べ、推奨作品を理由を付して列挙し、更に奥様の手記を始め、佐藤愛子、京極夏彦、宮部みゆき、大沢在昌各氏の追悼文や談話を掲載している。清張作品の手引書として最適ともいえるのでは。恥ずかしながら、清張は大家との勝手なイメージで、当方今まで一冊も手に取ったことがなかったが、本書により、清張を読みたくてたまらなくなった。
2022/07/10
hatayan
2009年刊行のムックを文庫化。松本清張の作品には、凡人が身の丈に合わないカネや女に欲を出したときに知らずのうちに押す「清張スイッチ」が仕込まれていると編者のみうらじゅんはいいます。ほんの出来心から歯車が狂いだし深い淵に叩きつけられる作風はまさに因果応報を地で行くもの。悪いことをしている姿を清張は常に見張っている。『黒革の手帖』『夜光の階段』『わるいやつら』などの代表的な作品は藤子A不二雄の「笑うセェルスマン」に似ているのではないかと気づきました。松本清張の入門書として親しみをもって読める一冊です。
2021/04/12
ミエル
大作家をみうらじゅんがまとめたある意味ファンブック。作品解説に始まり、清張本人の講演内容、身内や様々なマスメディア関係者、ファンの視点で語られた過去記事のまとめがメイン。語り手が多いので多面的な清張像がコラージュされ、そのすべてに愛が溢れている。それにしても清張ボタンは面白い。守るべきものができてから読むとホラー小説なのもわかる。不倫には清張ボタンがつきもの、2択なのに必ず地獄を選んでしまう愚かさ、手に取るようにリアル。小心者で真面目な人ほど、清張ボタンが過激に迫るんだろうね。怖っ笑
2022/05/22
bluemint
松本清張はホラーである。真面目に働いてきた小市民が、やっと仕事も家庭も安定して周りからチヤホヤされるようになり、女にもモテるようになってきた。そんな時決まって地獄が口を開けている。ちょっとした出来心のために、努力して築き上げてきた社会的地位が脆くも崩れ去る。これをみうらじゅんは地獄に入る「清張スイッチ」と呼ぶ。前半はm jの清張独自解釈がとてもユニーク。こんな視点で清張を読んだことがなかった。面白い!後半はバラエティに富むが、いかにも文芸誌のファンブックの体裁で、mj らしさはあまり感じられない。
2021/02/22
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