敗れざる者たち (文春文庫 さ 2-21)
敗れざる者たち (文春文庫 さ 2-21) / 感想・レビュー
キク
男の美学は面倒なので、近づかないようにしている。でも沢木の美学は受け入れることができる。題名は「敗れざる者たち」となっているが、客観的にみれば6篇の短編のボクサーや野球選手、長距離ランナー達はみんな「敗れた者たち」でしかない。でも沢木は「敗れた者たち」と誠実に向き合い、他のメディアでは語られない新しい「敗れていない」物語を僕たちに示してくれた。行きたい場所に行き、会いたい人に会い、書きたいことを書く。「深夜特急」もそうだ。沢木はそれらに誠実であるために、大きく重いものを背負うことを辞さない。つまり美学だ。
2023/01/06
Book & Travel
スポーツ物を読みたくて、この名作の新装版を丁度見つけ手に取った。昭和50年頃に書かれた著者の原点ともいえる短編集。昔読んで記憶に残っている話も。燃え尽きないボクサー・カシアス内藤、天才打者・榎本喜八やランナー円谷幸吉の悲劇等、アスリートの陰の部分に迫った文章は、今でも瑞々しくて古びた感じが無く、胸に突き刺さる。沢木氏の本は若い頃に沢山読んだが、作品に籠められた美学の様な物が、自分の価値観の深い所に影響を与えていることを改めて感じた。著者の後書きと、著者と交流し影響を受けたという北野新太氏の解説も良かった。
2021/10/21
のり
センスと努力があっても、表舞台で輝くスターになれるかどうかは、その選手の持って生まれた運もあるのだろう。あと一つのところでチャンピオンになれなかったり、2番手で選手生命を終えたり、注目されず地味に選手生活にピリオドを打ってしまったり。はたまた一度は表舞台で光を見たとしても、栄光の後には寂しい人生が待っていたり…どちらかと言えば光ではなく陰の部分に焦点を絞って書かれたスポーツノンフィクション。切なさの残る余韻。
2021/08/21
楽駿@新潮部
川崎図書館本。スポーツの世界は、勝ち負けで大きく見る世界が変わる。そして、どの形を勝ったと言えて、どんな終わり方を負けたと捉えるのか、そんな思いに迷った。ただ楽しくスポーツをしていたはずが、義務となり、上からの命令で人生を捻じ曲げられた人もいれば、やり切った感がないために、いつまでも同じところで漂い続ける人もいる。勝負に勝っても、人生に負けた場合もあれば、逆もある。野球で、ボクシングで、マラソンで、競馬で。光があれば、影はできる。けれど、影は無ではない。そこに生きた証は存在する。とても面白いエッセイだった
2022/10/30
もぐもぐ
沢木耕太郎さんの文章に初めて触れたのがこの本でした。昭和の時代のスポーツ選手たちの物語。どの話も熱量が高い。ノンフィクションにしては感傷的過ぎとも感じられる語りに著者の美学を感じ、特に円谷幸吉さんと輪島功一さんの話は何度読んでも胸に迫るものがあります。本のタイトルからしてもう切ない!
2023/01/17
感想・レビューをもっと見る