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ある男 (文春文庫 ひ 19-3)

ある男 (文春文庫 ひ 19-3)

ある男 (文春文庫 ひ 19-3)

作家
平野啓一郎
出版社
文藝春秋
発売日
2021-09-01
ISBN
9784167917470
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ある男 (文春文庫 ひ 19-3) / 感想・レビュー

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Kanonlicht

人が決して捨て去ることのできないもの、それまで生きてきた人生。では、人が人を愛するとき、今を生きるその人だけを愛することができるのか。その人生に看過できない汚点があったとしたら。その人自身の努力の及ばぬところで生まれながらに背負ってしまったレッテルがあったとしたら。一人の男の人生を他者が追跡していくことによって、彼自身には見えていなかった彼の本質が浮かび上がる。過去などなくても人はこんなにも愛されるのだという希望とともに、そうまでしないと過去からは逃れられないという不条理を感じた。

2021/11/04

しげき

夫の大祐が不慮の事故で亡くなった。妻の里枝は夫の親族とは疎遠だったが、亡くなったとなれば連絡しないと思い大祐の兄に連絡をとる。知らせを聞いた兄は里枝の元へ。そこで大祐の写真を見た兄は一言「これは私の弟ではない」··じゃあこの男は一体誰なんだ?映画が楽しみです。

2022/05/14

あきら

出だしの一文で、心を奪われてしまった。 表現の多彩さで、モヤモヤとしたものを言語化していく、素晴らしい作品です。 過去ってなんだろう。これから続くものよりも必要なものなんだろうか。そんな根源を見つめ直す読書体験になりました。

2021/10/17

エドワード

宮崎の山の町に住む里枝は、再婚した夫・谷口大祐に林業の作業中の事故で先立たれる。ところが彼の兄は写真を見て「大祐ではない。」と言う。里枝の夫は誰だったのか?里枝は、彼女の離婚調停に携わった弁護士・城戸章良に真相究明を依頼する。紆余曲折の末に城戸は驚愕の真相にたどり着く。過去と血縁に囚われる人間たちの、深い、深い物語だ。戸籍の交換、死刑廃止運動、在日三世の韓国人である城戸と家族の葛藤、現代社会の闇が圧倒的な熱量で展開されていく。「愛にとって、過去とは何だろうか?…」全てが明らかになった終幕の明るさが救いだ。

2021/11/27

きいたん

人は何をもってその存在を立証するのだろうか。戸籍か。身体か。それとも過去に残してきた足跡か。そんな問いが否応なく浮かぶ。初めて生まれた問い。繊細で緻密な言葉が紡ぎ出す彼らの感情は真っ直ぐに私の心に入り込む。そして考えさせるのだ。人の存在の不確かさを。それは里枝や城戸と同様に不安を増幅させ、動揺を誘い、愛に対する信頼をも揺るがす。だが不安の元凶となった「ある男」の存在を探す旅が、素朴だが純粋な愛を唐突に悟らせる。私は幸福だったのだと。あなたといると嬉しい。あなたがいないと寂しい。愛の原点に触れる物語だった。

2021/09/30

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