ゆうれい居酒屋 (文春文庫 や 53-5)
ゆうれい居酒屋 (文春文庫 や 53-5) / 感想・レビュー
しんごろ
昭和と現代の架け橋みたいな居酒屋。こじんまりとした居酒屋“米屋”(よねや)。女将の秋穂さんが、亡き夫の正美(まさよし)に代わって切り盛りする。お気軽レンチン料理を食べて愚痴りたくなるって、どんな美味しさだ。秋穂さんの何気ない話とアドバイスが気づきをくれる。一見さんが、感謝のためにまた来たくなる“米屋”。これは、間違いなく秋穂さんの仁徳だ。ツッコミどころは多少あるけれど、細かいことは気にしない。気にするとすれば、焼き鳥屋が気になるよ。人情満点、温かさ満点の居酒屋。読んでるうちに常連の気分になった。
2022/02/12
みっちゃん
何と不思議な設定。悩みを抱えたひとがその横丁に迷いこんだ時にだけ、30年前になくなった居酒屋と時空が通じる、という。この小さな奇跡は神様の采配、ということか。年月の隔たり故に女将との会話に「?」が生まれること多々ではあるが、美味しいお料理と女将の思い遣りある対応に、お客達はやり直す知恵と元気を貰って店を出る。でも、もう2度とその店には辿り着けない。じんわり、しみじみ心に沁みる。はじめ食堂もだけど、ここ米屋もお酒の進む美味しそうな逸品ばかり。巻末のレシピ、試してみたい。
2022/05/11
おしゃべりメガネ
いよいよ満を持して、本シリーズに突入です。『食堂』シリーズの「おばちゃん」&「婚活」をほぼ読了してからのこちらにチャレンジとなりますから、既に山口さんワールドの下地はバッチリです。タイトル通り、ふらりと立ち寄った居酒屋が、次に訪れたトキには見当たらなくなり、近くの店に聞いてみると、なんとその店は既になくなっているという不思議な展開に。しかし、'ゆうれい'とはいっても、そこはさすがの山口さん、おどろおどろしい雰囲気は一切なく、終始アットホームな空気に包まれ、話が展開します。相変わらず食べ物描写が秀逸です。
2023/10/15
タイ子
タイトルから店がゆうれいなのか、客がゆうれいなのか、はたまた…。新小岩の商店街にある一軒の居酒屋「米屋(よねや)」50歳ぐらいの女将さんが1人でやってるちっちゃなお店。仕事や人間関係で悩みふとのれんをくぐると、そこには笑顔の女将と美味しいお酒と肴が出てくる。肴はあぶったイカでいい~♪ではなく、いろんな食材を組み合わせて冷凍しておき、注文に応えて少々手を加えてレンチンするのみ。悩みを吐露し、女将のアドバイスをもらいスッキリの客はその店に二度と行けない。何故なら…。不思議を不思議と思わない不思議なお話。
2021/12/13
エドワード
新小岩の商店街にある居酒屋・米屋。未亡人の秋穂が店を切り盛りしている。商店街の店主たち常連組に混ざって、初めての客が訪れる。イタリアンの料理人、女優、エリート会社員、グルメリポーター、中華の店主。様々な悩みを抱えた人々が、秋穂の料理に癒され、ヒントを得て立ち直っていく。そして数日後に再訪すると米屋がみつからない。実は秋穂は三十年前に亡くなっていた!という設定の短編集だ。秋穂がスマホやJリーグを知らないという伏線がある。悉皆屋という商売も昔は重宝したんだね。お話の半分は料理の描写で実に美味しそうだよ。
2022/09/15
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