まつらひ (文春文庫 む 13-8)
まつらひ (文春文庫 む 13-8) / 感想・レビュー
あすなろ
夜な夜な読書本として読了。帯に、この夜踏み外す、とある。正に祭り等のシチュエーションを核とし、その様や想いを描いた短編集であった。特に深い感動等はないのであるが、筆による情景や想いの描写を味わい、酔う事が出来るかという作品集であった。また、色や艶という筆力にも酔えるか、という事でもある。
2022/03/13
りゅう☆
『夜明け前』の夢現に激しく抱かれたのは夫と思ってたのに…。今の世界に慣れてきたものの本当に36歳を迎えることができるのか不安が拭えない『ANNIVERSARY』。別れた夫との再会に安堵した『柔らかな迷路』。脳梗塞で体が不自由になった夫との子供が望めず女の性が虚しい『水底の華』。自分を守ってくれた男友達の死が切なすぎる『約束の神』。年上の恋人を失ってしまうかもしれない寂しさが込み上げる『分かつまで』。賑やかで血気盛んな祭りの傍ら、生と死、そこに艶めかしくも寂寞たる性が絡みつく。花房観音さんを彷彿としました。
2024/03/21
まさきち
色々な祭りに絡めたマイルド村山を楽しめた短編集。
2023/08/03
空のかなた
まつらひ(=祭)、生と死、官能が散りばめられた短編集。最初の章の「夜明け前」は、農村の閉そく性、跡取りを産むことが嫁の役目と、一抹の疑いも持たない姑。嫁である私は艶夢の中で夫と激しく交わっていたと思っていたはずが…忌むべき真実を知ってしまい、ただ佇む。描写が生々しい。また「約束の神」は一人の男性の告白を聴くフリーライターが主人公。彼女は中性的な名前と中性的な身体をもつがゆえに、度々好奇の眼に晒される。「約束」「秘密」「信頼」「マイノリティ」等が不思議なバランスで交じり合った名作だと思う。
2023/11/30
KEI
「まつらひ」とは祭の事だそうだ。6編の祭と性愛を絡めた短編。家を繋いで行くためには手段を選ばぬ姑や義兄に蹂躙された嫁、それを赦している夫も理解出来ないと思ったレタス農家を描いた「夜明け前」には嫌悪感が大きかった。蘇民祭や相馬馬追いの描写には迫力がありさすが村山さんだと思えた。祭の高揚感は人の性愛にも結びつくのだろうか。最後の相馬馬追いを描いた「分つまで」は救いがある話だった。カメラマンの父親は論外だが。
2023/11/13
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