潮待ちの宿 (文春文庫)
潮待ちの宿 (文春文庫) / 感想・レビュー
エドワード
これは、待つ物語だ。幕末も押し迫った備前国、笠岡の旅人宿・真なべ屋で働く少女・志鶴がいた。笠岡は船人が引き潮を待って滞留した街だ。港の宿は、便船の到着を待ち、客を引く。志鶴を温かく見守る主人の伊都は倉敷の元娼妓で、言い交した男と足抜けに失敗し、投獄された男の迎えを待つ。河井継之助や、禁門の変で敗走する長州の志士も来て、風雲急を告げる世相を垣間見る。明治になり、伊都を肺咳で亡くした志鶴は一人で宿を守る。そこへ真なべ屋を別荘として買いたいという豪商が現れる。思案に暮れる志鶴。瀬戸内の夕日が美しい終幕。
2023/10/01
coldsurgeon
人情噺なのに、歴史小説のような趣がある。江戸末期から明治初期にかけてを描く、瀬戸内海の港町の商人宿が舞台の物語。主人公の志鶴という女性が、世情に揺れ動きながら成長する様は、どこかで応援したくなる。連作短編小説なのだが、ストーリー展開は意表を突くものがおおく、面白い。
2022/06/05
とくま
×P30
2022/07/30
好奇心
伊東潤さんの作品にしては、静かな穏やかに流れる小説に思える、舞台は岡山県笠岡市、瀬戸内になる小さな港町である、幕政時代は天領だったようで、物資の流通地でそれなりに、宿・遊郭等があり栄えていたようである、宿真なべ屋を営む女将・伊都と使用人・志鶴を中心に幕末から明治と静かに流れる時代、明治期なり志鶴が宿を引き継ぎ、新しい時代に入る、街は衰退し、宿の存在も不要になるが、警官の市之進と夫婦になる伊都の叶わなかった小さな幸福を実現した志鶴 潮待ちの宿の題名にふさわしい、穏やかな物語であった いい癒しになりました
2022/04/27
はゆ
江戸時代から明治時代へと移りゆく中で、小さな宿で働きながら成長し、自分の人生を切り開いていく少女の話。今よりずっと、人生が短い時代。死が身近で、人は呆気なく死んでいく。だからこそ志鶴は、自分の人生を踏み締めるにように歩いていく。儚く一瞬の恋の話、迎え船が良かった。時代小説だけど、とても読みやすくて、すごく綺麗にまとまった話だったので、読後感がとても良かった。志鶴の成長が手に取るように分かり、清々しい。
2023/12/30
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