神様の暇つぶし (文春文庫 ち 8-5)
神様の暇つぶし (文春文庫 ち 8-5) / 感想・レビュー
ミカママ
帰国中にふらふらしてた本屋さんで目があってお迎え。帯の惹句には騙されることが多いんだけど、これは期待通りだった。「抱きながら、あのひとに食われてしまいたかった」。こんな恋愛、一生に一度でいいから経験したい。今もヤスリでこすられたごとくの心臓がヒリついて痛む。
2022/10/04
のぶ
すごくディープな恋愛小説だった。主人公は父親を亡くし、生きる気力の無い毎日を送る柏木藤子。彼女は着るものに無頓着で、化粧っけのない地味で男っぽく見える女子大生。そんな藤子の前に近所にある写真館の不良息子として知られていた廣瀬全が、ある日現れたことで物語は展開する。全は自分の父親より年が上で、30歳は離れている。最初は何気ない会話を交わすに過ぎなかったが、そのうち彼さえいれば他のことなどどうだって良いと、どんどん溺れていく。藤子の心理的内情がよく表されていて面白かった。ラストシーンも切なかった。
2022/07/20
クプクプ
二十歳の女子大生と50代の男性カメラマンの物語。途中まで、過激で下品な話だと思っていましたが、最後に、伏線を回収して、絶妙な余韻で物語が終わります。季節も夏ですし、小旅行や、桃や山椒の実など、食べものの描写も、落ち着いていてよかったです。被写体としての主人公をカメラマンの全さんが、シャッターチャンスの神様として雰囲気を感じる、簡単に表現すると、そのような感じでしょうか。物語の筋もはっきりしていますし、著者の告白のような表現も多々ありますし、読みやすく、この先、千早茜さんの代表作のひとつになっていく作品。
2024/08/05
優希
出会いが自分を変えてしまうということがあるのですね。父の死後に出会った写真家と蘇るひと時。臆病な心に戻れないだろう自分。生々しく鮮烈な関係を描いた恋愛小説でした。
2022/10/17
エドワード
長身で女性らしさに劣等感を抱く女子大学生・柏木藤子。父を亡くした夏の日、父の知人の写真家、廣瀬全と出会う。言葉使いは乱暴、仕草は投げやりだが、優しい全。藤子は全に振り回され、恋に落ちた―藤子はそう信じていた。かたや全はどう思っていたのだろう?藤子を撮影した写真集を残し、全は去った。全の身体は死の病に冒されていた。すべてが終わり、藤子はあの夏の日々を思い返す。「思い出とは薄れるものではなく、濾されてしまうもの。」に始まる冒頭の数行が絶品。長い時を経て、藤子は<神様の暇つぶし>の言葉を理解できたのだろうか。
2022/08/03
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