駆け入りの寺 (文春文庫 さ 70-2)
駆け入りの寺 (文春文庫 さ 70-2) / 感想・レビュー
クプクプ
この作品は、私には難しすぎました。「男女の関係は、中途半端が一番、窮屈」や「嘘をついていた者が蚊の鳴くような小さな声で白状する」といった言葉が胸に刺さりました。他は京都のかき氷が美味しそうだったこと、菊を育てるのが上手な男性の登場人物の描き方が印象に残りました。私には歯が立たない作品で、歴史上級者向けだと感じました。
2023/06/17
はつばあば
まぁ読み応えありました!(#^^#)。江戸中期後水尾天皇の皇女の為に作られた林丘寺、比丘尼御所が巻き込まれた話を青侍静馬を通して語られる話なんです。京都というても公家言葉など全く知らない田舎者の私。ちょいちょいと公家言葉を庶民の言葉として写し取ってたら内容もさることながら、今は修学院離宮の傍にある林丘寺の写真を見て‥この階段を駆け上がって・・。鎌倉の駆け込み寺東慶寺ではありませんが、人が逃げ込める場所の大切さは今も昔も変わらないですね。歴史や京都の好きな方は是非公家言葉と共に林丘寺を楽しんでもらえたらと
2023/07/19
エドワード
修学院離宮へ行ったことがある。楽只軒の名で思い出す。後水尾天皇の別邸で、その一部が皇女が住持を務める比丘尼御所、林丘寺だ。江戸時代初期。現在の住持、霊元天皇の第十皇女・普光院元秀と先代であり元秀の伯母である、後水尾天皇の第八皇女・普明院元瑶を中心に、肩を寄せ合って暮らす人々の四季。内裏と変わらぬ日々は年中行事で忙しい。上巳の節句、氷の朔日、乞巧奠(七夕)、重陽の節句、達摩忌。そんな中で様々な事件が起きる。尼たちにふりかかる過去のしがらみ。皆で解決していく様が美しい。哀歓に満ちた人生に思いを巡らせる物語だ。
2023/09/16
Kei.ma
比叡山の裾にある林丘寺は歴代皇女が住持を務める比丘尼御所の一つとか。七話からなる物語はいずれも奥深い。殊に隠居の身である前の住持普明院元瑶さまが揉め事の行末を操りタイトルの真意に向かわせるストーリーが素敵だ。ところで、この小説は会話主体のせいかとても柔らかい上、下層の民の感情を主に描写するなど記憶に残る澤田作品とは異なる趣きがある。それが京言葉と折々の季節の描写と相まって何ともたまらない。と、とても豊かな時間に浸ることができ嬉しい。
2024/05/13
Y.yamabuki
短編時代小説を読むと、冒頭季節の移ろいを感じさせる数行の美しい情景に出会える。本作は、歴代皇女が住持を務める林丘寺が舞台。雛祭りや七夕、重陽の節句と宮中に倣っての雅な行事の様が物語と絡めて描かれる。使われる御所言葉が一層雅な雰囲気を醸し出す。元住持の元瑶が、おっとりした御所言葉の中に光る思慮深さで揉め事を解決する。そして最終話で、元瑶が誰に対しても、優しく救いの手を差し伸べる理由が、明らかに。屈託を抱えながら一途に生きる御所侍の静馬も、その傍らで心に抱えた重荷を解き放していく。
2023/09/27
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