夜叉御前: 自選作品集 (文春文庫 ビジュアル版 60-28)
夜叉御前: 自選作品集 (文春文庫 ビジュアル版 60-28) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
傑作短篇集。どの作品も体が震えるような恐ろしさに満ちているが、繊細な絵の美しさと巧みな物語の展開に引き込まれてページをめくってしまう。人間の心の奥に潜む狂気を巧みに描いた作品が多くて、幻想的な内容なのに現実味を感じた。『平家物語』を巧みに取り入れた「海底より」が私のベスト。アイドル歌手だった少女は目の病気にかかり、視力を失いそうになっている。やがて平家の落人たちの幻が見え始め、狂気の世界に引きずり込まれていく。読者を奈落の底に突き落とす結末に唸った。
2018/07/26
カナン
憐れで恐ろしく、悲しくも美しい珠玉の六篇。人が持つあらゆる七情、人であるが故の業の深さ。短絡的な恐怖とは一線を画した、しんと凍り付くような恐ろしさが心に植え付けられていく。理不尽という暴力によって頽れた魂は迷い、迷って惑って次の誰かを同じように暗い淵へと引き摺り込んでゆく。狩衣や水干などの和装がどれもはんなりとして麗しく、全てのカットが美しいタッチで描かれることで遥か昔から今日まで、そして未来永劫人が抗うことなど出来ないだろう禍々しい残酷な世界が一層鮮明に生々しく姿を現すのである。その輪郭を見たら、最後。
2016/06/02
ふみ
山岸凉子ってすごい。
2021/08/21
のりすけ
「夜叉御前」のおぞましさったら!「私」の視点で話が進むのがミソ。家とそこにいる何かのせいで体調もおかしくなっていくけど、あたし負けない!…けど。ああ、なんて厭展開。
2019/03/27
ochatomo
愛憎・怨念の凄まじさ、狂気の運命に翻弄される若人を描く どれも恐ろしいが「時じくの香の木の実」が印象深かった 初出1979~1986年 解説は夢枕獏氏 1994刊
2021/10/26
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