一九四六年憲法-その拘束 (文春学藝ライブラリー) (文春学藝ライブラリー 思想 13)
一九四六年憲法-その拘束 (文春学藝ライブラリー) (文春学藝ライブラリー 思想 13) / 感想・レビュー
双海(ふたみ)
全共闘運動や三島由紀夫の自決事件など、遊戯性と虚構性の域を出ない戦後日本の政治運動を「ごっこ」と名指し、公的なものが存在しない日本を批判した「『ごっこ』の世界が終ったとき」(1970年)。また、検閲により一切の批判を封じられ成立した日本国憲法の成立過程を、米国公文書館の史料等を基に検証し、憲法批判がタブー視される時勢のなか、「押しつけ」憲法だと鋭く批判した「一九四六年憲法――その拘束」(1980年)。(本書紹介より)
2015/04/16
roatsu
江藤淳畢生の名著。GHQ統治と検閲を知らず、その絶対支配下で当時の米国の利益、第二次大戦直後の時点のみしか説得力を持たなかった9条2項のような非現実的考えをふんだんに反映して成立させられた現憲法を疑いも無く愚かに崇拝する日本人が増えた今こそ価値がある一冊。和英で残る膨大な資料を読みこみ意図的に誤訳させている個所を見抜いたり、氏の慧眼には驚くばかり。辛く苦しい執筆作業だったのではないかと思う。巻末の解説は蛇足で、本書を読んで感じること、考えることは読者それぞれに任せるべき。悪しき編集の見本のようなもの。
2015/07/30
こぼこぼ
「『ごっこ』の世界が終わったとき」を読み返したくなっていたので,学藝ライブラリー版で復刊されたのは喜ばしい限り。表題作はその後の「閉ざされた言語空間」へと続く。「黙契と共犯」,「顕教と密教」と云ったタームで日本の戦後状況に切り込んで行く。現状はこれが書かれた1960~80年よりも,よりもグロテスクな状況に陥っていると感じられる。昨今の安保論議を追う上でも復習出来た。解説が「永続敗戦論」の白井聡と云うのは完全に編集者のミス。時局を斬っているつもりなのだろうが,悪罵は読むに堪えない。
2015/05/20
Ohe Hiroyuki
著者が1960年から1980年にかけて「戦後日本と憲法」について書いたエッセイ集である。1960年・1970年においては安保闘争、1980年においては冷戦に近づく当時の息遣いが見える一冊である。▼本書を読んで思うのは「覆水盆に返らず」ということである。著者の述べていることは至極正論であるが、だからこそ敗戦によって完全に失われてしまったものがあり、逆に言えば得られたたものもあることを感じざるを得ない。▼他方で日々生きることは、日米関係も憲法も出てこない。これがまた政治という次元では難しさを感じる。
2024/07/18
小鳥遊 和
本書の表題論文および「ごっこの世界が終わったとき」については、かつてamazonに詳細な要約を書いた。同時に、白井聡の解説への批評もつけ加えた。手に収まる小冊子ながら、内容の充実、現在も古びない問題提起は驚くべきものだ。絶版の憂き目に遭わないとも限らないので、入手、一読をお勧めする。
2022/09/25
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