遠い螢
遠い螢 / 感想・レビュー
星落秋風五丈原
1993年7月徳間書店から刊行された短編集。こまやかな情感、更には厳しい人生への問いかけが示された一巻。こまやかな情感とは、京の四季折々の風物を背景にした人々の生の営みであり、厳しい人生への問いかけとは、その営みを支えているものの確認 人は他者との関わりの中で生きさせてもらっているという当たり前すぎて日頃忘れかけている一事。『雨あがる』
2005/05/08
オレンジ。
図書館の本の交換会で頂いた、澤田さんの初期作品と思われる単行本。新品と思われるくらい綺麗な本でラッキー。独断だけど、今とは違う感じの筆運び。お若い頃の澤田さんと出会えたようで、ある意味嬉しかった。
2015/12/02
山内正
向いの兄弟喧嘩を聞き出掛ける支度 女の盛も三十までと佐兵衛に言われ 堅気にと言われたのを気にも止めず おひさはもう七十一、生きてはる筈ない 神社の稲荷の陰でお婆さん どうしました 吉右衛門て油屋どす 人を蔑んだりしたらと親父に言われてます 今聞える話は油屋の事の企みや 暖簾を上げ吉右衛門が あの時の! 誰かわしを見てる 実はと昨夜の話 みんな覚えのある話で相談してみます 今日は死んだ父の命日です絵を床間に、これは佐兵衛さんあ懐かしゅう おひさです もしかして螢茶屋の?父から聞いています、おひさの嗚咽が続く
2021/02/15
山内正
絵屋で働くおみよ 嫁ぎ先に子を残し離縁されたが気立ても良く働き者 世帯持つ気にならんかと師匠の勧め で宗説は世帯を持った 万亀屋に入った女は道楽止まぬ亭主に愛想尽かし姿を消した おみよが世帯持って一年万亀屋が左前と聞き奉公人が辞めて店は売りに出た おっちゃんおおきにと米袋抱かえ 米屋から出る 何時迄もこんな事 出来しませんと米屋が言う 余分にお千代に持たすのは何れ気が付くと 今は女の世話になり遊び廻る男 甘やかし過ぎたと義母は喧嘩を繰返す 男二人連れ奉公に娘をと来る 言っても聞かん息子に背中へ包丁を刺す
2021/02/08
山内正
何度か親身になる人がいたが 聞かなかったまま酒に溺れ遣り手婆 に十五年 佐兵衛さんに言われた言葉が思い出す 今は長屋住まいで 夜に賽銭を取る事に毎夜出かける あの時聞いてたのにもう遅い 熊野屋吉右衛門さんに助けて貰い こんな婆さんにと恩にきる 男二人の話に熊野屋の名がして 明くる日訪ねた 座敷に入り誰かに見られてる気が 吉右衛門に話たあと 誰かにと話す 今日父親の命日でと掛軸を指指す あっ佐兵衛さん なんでここに? あのおひささんがあんたとは 後の言葉は聞こえない 涙が溢れて何も!
2020/05/07
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