石の刻シティ (徳間文庫 お 16-2)
石の刻シティ (徳間文庫 お 16-2) / 感想・レビュー
skellig@topsy-turvy
裏のあらすじを読んで、正直あまり期待してなかったのですが面白かった。全体的にどこか歪んで病んだ、終末的雰囲気の近未来での一種の「恋愛」模様。忌避される獣の子を孕み死を見据えるきっとあまりに冷静な娘、死んでもクローンとして蘇える世界での愛憎劇、もう全てが終わってしまった世界で仕える人間もなく取り残されたロボットなど、破滅の気配が濃厚にちらつく景色は美しいけど不吉。澱んだ未来の肖像。それでも生物は互いに関わり続けるんだろう。
2013/11/27
kochi
クローン技術と記憶の移転により死を超越した未来、彼女は、かって死ぬ前は男であり、恋人に殺害された記憶を持ち、そして、今は復讐のために街をさまよう。血と暴力にまみれた街を舞台にして、テクノロジーが進化しているも階級社会であるという終末的、退廃的な雰囲気が支配する「ニルヴァーナ」など大原まりこのグロテスクな本質がにじみ出た、少女たち(性別は問はない)を主役にした短編を主にしているが、77年のあの大ヒット映画に登場するロボットの親戚が出てくるような遊び心もあり、その点でも80年代の作品なんだと強く実感する。
2019/11/16
ひょろ
近未来を舞台にした少女のsurvive物語。「石の刻シティ」「ニルヴァーナ」「"3"」は支配者たる男(父性的なもの)に対峙し生き延びる物語。「マイ・アンダーウォーター・ボーイ」の場合は父性的というより少女の鏡写しのマゾヒストから逃げ出し、また戻ってくる話。「ハコダテ……」は"にんげんを失わされた"ロボットたちがどう生きていくかの話。どの話にも広義の少女がいてのびのびと右往左往しながら生きていく。(作者曰く"少女とは、意地悪で気分屋で娼婦性をもち、けっこうしぶとく強くサヴァイヴァルしてしまう生命体"らしい)
2014/12/30
たこい☆きよし
こちらは1992年文庫化の大原まり子短編集。あとがきにある通り、5編の短編はまさに「五つの世界」。最後の「ハコダテ……」がやや毛色が異なるものの、徹底して無道徳で暴力的な世界が万華鏡のように提示される。これもまた、個々には独立していながら短編集のトーンが一貫しており、個々の短編以上のヴィジョンを示す名短編集。
2021/09/20
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