マルカの長い旅
マルカの長い旅 / 感想・レビュー
kawa
ナチス支配下、弾圧を逃れるためポーランドからハンガリーへの過酷なユダヤ人母子逃避行を描く。母と離れ離れとなった末娘・マルカ(7歳)の壮絶生活と驚異の生命力。彼女の行方を必死に捜す母・ハンナの焦燥。母と長女・ミンナとの葛藤。児童小説くくりの本作だが、そんなくくりが嘘のような読みどころ多数の力作。舞台地は当時はポーランドだが今はウクライナ。現在の係争地の複雑な歴史事情も垣間見られる。
2023/01/08
koji
訳者の松永美穂さんの「ラヴォツネのコーヒー」(12/18付日経新聞文化欄)は、訳者が10年位前本書の舞台のラヴォツネ(ウクライナ)を訪れた時の現地の人との心温まる交流と現下の紛争との鮮やかな対比を描いた好エッセー。この文章に触発され本書を読みました。粗筋は、ユダヤ人迫害により故郷を追われた母子が途中で離ればなれになる中、7歳のマルカが飢えや寒さに耐えながら長い旅の末母と再会する迄を描く物語。本書の凄みは、お涙頂戴にしない所。極限の状況下互いに探し求める母子の人間性が崩れていく緻密な描写が息を呑みます。良書
2023/01/09
ぱせり
ただ、生きろ生きろと願いながら、ひたすらページを繰りながら、生き抜くために、ごっそりとそぎ落とされていくものにぞっとする。人ってなんだろう。一方で、このただならぬ緊迫感の中での母と16歳の娘のぎくしゃくした関係があまりに現実的すぎてむしろ非現実的に感じるようでした。否応なしにばらばらになっていくもの、必死につなぎとめようとするもの、そして、何よりも生きること人であることを、強く激しく問いかけれられているようで、正直目をそらしたくなる。
2010/08/17
Alm1111
第二次世界大戦下。ポーランド南部の村でユダヤ人の強制移送が始まる。ユダヤ人のハンナは村でただ一人の医者。彼女から親切にされたドイツ人将校が耳打ちする「今すぐ逃げて」。ハンナは着の身着のまま16歳のミンナと7歳のマルカを連れて国境を越えるが、途中のハンガリーの村で高熱に倒れたマルカをユダヤ人一家に預ける決断を迫られる。だが一家は保身のためマルカをゲットーへ放り込んだ。マルカと別れ苦悩するハンナ。母に反発する思春期のミンナ。状況を理解できないまま殺戮のゲットーに遺されたマルカ。三者三様の生きる闘いが描かれる。
2024/10/20
ハル
ユダヤ人狩りから逃れるため、何の準備もしないまま国境の山々を超えてハンガリーに逃げることになった母娘。主人公の7歳の少女マルカは途中病気になり母ハンナと姉ミンナと離れ離れになってしまう。ここからマルカは一人きりで生き延びる壮絶な日々が始まる。10月から3月までの長い期間生き延びたマルカはラストで母に再会するが、ある意味ここが一番残酷で辛いシーンになっている。マルカの受けた傷がどれほど深く、またマルカの旅がまだ終わっていないことを知る。強いストレスを持ちながら一気にこの本を読んだ。
2012/10/07
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