テロルのすべて
テロルのすべて / 感想・レビュー
巨峰
映画「太陽を盗んだ男」にささげられている。映画は東京のど真ん中で原爆を爆発させるというとんでもなくインパクトの強いものだったが、こちらは長崎原爆の仕返しとしてアメリカでブッシュ元大統領を狙って原爆を炸裂させるという話。右翼にも親米右翼と反米右翼があるらしいけど、こちらか完全に反米の方。アメリカが嫌いというだけじゃなく1度核を落とされないと本気で核廃絶なんかしようと思わないだろうという理屈もある。さらに、アメリカを斬る帰す刀で、戦前日本や今の日本も断罪しちゃうという切れ味の鋭さがある。単なる右翼でもないか
2016/11/06
キク
「大戦終結には、長崎、広島が必要だった」という理屈に対し「だったら核全廃のために、アメリカ本土に核を落とそう」と考えた主人公。樋口独特の疾走感あふれるドタバタ感が少ないのと、ナショナリストの一人称を読み続けるのがキツいと言えばキツい。いや、樋口なので当然面白いんだけど。著名なテロリストが作中で挙げられていたけど、全員男だった。暴力で自分の意見を通す発想って、男の本質的な部分と繋がっているのかもしれない。坂本龍一が「子供を産めないから、音楽と建築と軍隊を男は生み出した」と言っていた。んー、なんか自分勝手だ。
2021/08/05
おーしつ
「犬は電柱に小便をかける。猫はひなたで丸くなる。そして人間は戦争をする。これは習性だ。いくら知恵をつけようと、たとえ滅んでも治らない。」 短めのシンプルなストーリーは、主人公の言動を読者が忠実にトレースし、物語の結末について個々人が立場を明確にすることを意図しているように思えた。 ただ作品のキモはジェニファーとの一連のやり取りとその決着。嗜虐的暴行は樋口作品では通例はいえ、この場面でそこに至ったこと。最優秀な頭脳同士でも対話で解決できなかったこと。世界がいつまでも混沌とし続けるだろう予感。
2011/10/06
カラシニコフ
怒りが、衝動が、爆発する。これは樋口毅宏の作品だが、同じものを別の作家が書いたらどうなるだろうと想像しながら読むのも楽しい。個人的に読んでみたいのは中村文則版と馳星周。舞城王太郎あたりもよんでみたい。 ★★★☆☆
2017/12/12
そうたそ
★★☆☆☆ この作家さんはいつも作品ごとに作風を変えてくる上に、一定してどの作品も面白いので期待しているのだが、これは面白くなかった。こうも露骨に作者の主張が見え隠れしてしまっては、読者としては興醒め。所々に作者のユーモアを感じ取ることはできるが、全体的にあまりに荒唐無稽、唐突すぎるストーリー展開はやはり無理がある。100ページちょっとという短さも、その短さにまとめた、というよりも、ただただこの程度の浅さしかない内容だったと言わざるを得ない。この短さなら、せめて登場人物をコンパクトに収めてほしい。
2013/03/30
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