帰らずの海 (文芸書)
帰らずの海 (文芸書) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
目隠しテストを行ったとすれば、これが馳星周の作品だとわかるだろうか。終盤はともかく前半部では、少なくても私は全く自信を持って答えられないだろう。もっとも、この作家は直木賞作の『少年と犬』など一連の犬を扱ったものがあり、また『エウスカディ』のようなバスク解放闘争を描いたものもあるなど、実に多彩な作品を書いている。本書は基本的には警察小説でありながら、主人公の田原はその過去も含めて相当に異色である。「昔」と「今」が交互に語られる形式をとっているが、それは一応の成功を収めつつも、今ひとつ強い必然性を持って⇒
2022/12/23
おしゃべりメガネ
思ってた以上に馳さんっぽい雰囲気が取り戻せていた感じがしました。なんだかんだといって、ワルいヤツらを書かせたら、やっぱりウマいですね。とにかく終始、ヒリヒリした緊張感と物悲しい愛憎劇はなかなかヘヴィです。函館を舞台に書かれてはおりますが、もう少し函館感を醸し出しても良かったのではと思いました。結局はいつものように救いを求めて迷走し、過去と決別できない哀しいオトコの堕ちてくお話ですが、もう少しよりノワールな感じを出してもと贅沢に求めてしまいました。読みやすい文章は健在で、どっぷりと馳ノワールに浸りました。
2014/12/19
初美マリン
理不尽なものに踏みにじられた若者たちの軌跡、函館の街がいとおしく思える
2021/01/02
モルク
20年ぶりに函館に戻ってきた田原警部補。そこで元恋人恵美の殺人事件が起こる。高校生の時彼は事故で両親を亡くし父の親友であり、郁夫恵美の兄妹のいる水野家に引き取られる。大学受験に向け勉強し恵美との恋愛も充実していた田原だがある日突然姿を消す。2度と戻りたくなかった函館、20年前いったい何が…。田原は必然的に過去と向き合うこととなる。初恋の相手、そして彼との約束を忘れずに、それだけを支えに生きてきた恵美が悲しい。こんな一途な女性がいてほしいという殿方の想いを感じる。救いがない話を書くのが馳さん、本当にうまい!
2020/03/12
ゆみねこ
馳さん、初読み。函館を舞台にした警察もの。20年ぶりに戻ってきた函館、そこで起こったのはかつての恋人水野恵美の殺人事件。事件を追う刑事田原は自ら捨てた故郷と向き合わざるを得ない。20年前に起きていたことは予想通り、ストーリー展開も。まずまず面白く読めました。
2015/07/08
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