野望の憑依者 (文芸書)
野望の憑依者 (文芸書) / 感想・レビュー
とし
南北朝時代、鎌倉時代末期から室町時代初期足利家の家宰・高師直の物語。 憑依(野望、権力)に取りつかれた師直、やがて篠の出現で憑依が薄れ死を迎える、師直に仕えた佐平次も同じ運命をたどる。年代的にはちょっと苦手 やはり1550年以降が良いな。
2015/01/23
藤枝梅安
高師直といえば、「仮名手本忠臣蔵」の悪役として知られているが、実在の師直は足利家の執事(家宰)として尊氏を押したて、直義と対立し南北朝の混迷の大きな原因となった人物。悪であることに意義を見出し、あくまでも尊氏の陰で策謀を巡らすことに生きがいを感じている。その異常な思考と行動が、実はその後の時代の価値観形成の基となっている点を、筆者は架空の人物を交えて骨太な物語が進む。南北朝の混乱を史実を基に書きつつ、師直の最期を史実とは異なり、子飼いの佐平次(架空)の策謀とし、師直に憑依し魂を奪った人物として描く意欲作。
2014/09/30
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
南北朝時代、北朝は足利家の執事である高師直の目をとおして描いた時代小説。死というものが日常茶飯事に起き、野望に取り付かれ権力に餓えそれを追う者だけが己の手に収め生きていく事ができる世の中。ただ、いつしかその野望の魔の手によって自らの身も・・・。悪党の滅びる様をスッキリと見るか、これも定めと憐れんで見るか。
2018/03/25
巨峰
足利幕府執事高師直が主人公。鎌倉幕府の滅亡から建武の新政、足利家の内紛、高師直の死までを一気に描く。大作だけど良くまとまっていて一気に読めた。楠正成、北畠顕家、楠正行、敵方の死にざまが印象的でした。
2016/10/29
チャーリブ
足利家の家宰・高師直の野望の生涯を描く時代小説。高師直というと、仮名手本忠臣蔵のせいで塩冶判官の妻に横恋慕する卑劣漢というイメージが流布しているが、実際はそうではないだろう。「この世は野心と欲心だけでできている」という分かりやすい人生哲学を冷徹に実践する師直は、悪の魅力のようなものを醸し出している。塩冶判官の妻(小説では篠)との出逢いから彼の哲学が揺らいでいくところが面白い。合戦の活写はさすがだが、足利尊氏が躁鬱の人物として描かれているのは残念。無駄のない簡潔な文体。読み応えあり。○
2022/06/10
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