刑罰0号 (文芸書)
刑罰0号 (文芸書) / 感想・レビュー
まちゃ
犯罪者に被害者の記憶(殺された際の恐怖)を経験させる「刑罰0号」。SFとしては特に目新しいテーマではありませんが、西條さんのSFテイストの作品は珍しいのではないでしょうか。「刑罰0号」からラストの「グラウンド・ゼロ」までのストーリー展開は面白かったです。エンディングの人類の贖罪も予想外のスケール感で良かったと思います。
2017/01/15
しんたろー
初読みの作家、西條奈加さん。よくあるSF連作短編と思って軽んじていたら、章が 進むごとに壮大な話になってきて姿勢を正した。「贖罪」をメインテーマにして少年 犯罪、死刑制度、テロの現状、核問題など深刻な問題を挙げて、是非を問いながら 架空のシステムを使ってハラハラさせてくれる。メインキャストたちに親近感が湧く ような描き方をしているので、共感しながら読めるのも良かった。作者の人間社会 への憂いと人間への愛情を感じるし、風化しつつある広島・長崎を忘れないように 警鐘を鳴らしてくれるバランスのとれた作品。
2017/01/12
文庫フリーク@灯れ松明の火
これまでの西條奈加さん作品、あるいはSFとして読むと落胆するかも。当初、亡くなった被害者の脳から記憶に関わる部分を取り出し再合成、それを加害者の脳で再生することで、被害者遺族の望む真の贖罪促すシステム【刑罰0号】しかし加害者の神経は、自らが被害者の記憶を追体験するには脆すぎ、更生はおろか命を保つことも、正気を保つことすらできなかった。けれどメインテーマは冒頭の佐田行雄の被爆体験に端を発する。原爆を投下された直後の広島に「この悲劇を、未来に決して繰り返さないために、俺達の子供や孫や曾孫や、その先も→続
2017/01/05
いつでも母さん
西條奈加さん、このような作品も書くのね~ただ、いつもの西條さんだと思っていたら大間違い。とても読みにくいの(汗)時間がかかってやっとの読了。加害者と被害者(被害者家族)の思いは噛み合う事等なく、どこまでも平行線・・そうだと思う。広島の被爆者と少年法下での強姦殺人の加害者がいくつもの記憶の書き換えで再び邂逅するのだが7章までたどり着くのがなかなか・・富や領土、資源の取り合いには人間の本質が関わっている。そうして核が絡むならこんなやり方で全世界に警鐘をならすのも一つの手か!嗚呼、私に答は無いのが情けない。
2016/09/21
紫 綺
死刑に変わる犯罪者刑罰のための記憶操作。それはやがて世界平和のための壮大な計画へと発展していく。西條さんには珍しい近未来SF。あ、でもゴメスはSFか。コメディ要素は少なく、とてもマジメで読み手をのめり込ませる秀作。
2016/10/06
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